勝利を先輩に報告する。第103回全国高校野球選手権(甲子園)出場を懸けた県大会が7日、岩手、福島を皮切りに開幕した。注目校や球児を紹介する「白球にかける夏 2021」の最終回は、今日8日に開幕する山形編です。鶴岡高専はコロナ禍で昨夏の県独自大会を出場辞退し、2年ぶりの夏舞台に挑戦する。エースで4番の荒井陽主将(3年)を中心にチーム一丸となり、1勝をつかむ。

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鶴岡高専が、心を1つにして18年以来の初戦突破を決める。工業高等専門学校の同校は5年制だが、現3年生にとって今大会は甲子園出場を懸けた最後の夏となる。エースで4番を務める荒井主将は「後輩には、打ったり抑えたりと見える形で結果を見せたいし、先輩方には勝ちという結果を見せたい」と意気込んだ。

先輩の分まで一投一打に気持ちを込める。昨年3月、同校は新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、全ての部活動が中止に。寮生も全員帰省し、通学していた生徒も学校に来ることができず、対面授業からオンライン授業に切り替わった。春季県大会や同夏の全国選手権、県予選もコロナ禍で中止になったが、直後に代替となる独自大会開催が決定した。しかし、グラウンドでの全体練習や自主練習が再開できておらず、出場を辞退した。

部活動の解禁は同10月。そのため、新チームで戦う8月下旬の秋季庄内地区予選も不参加。新シーズンへ向け、冬は基本的な捕球と送球動作、スイングの確認を徹底した。今春の同地区予選は2戦2敗。それでもチームは計16安打12得点を挙げ、2戦目の鶴岡中央・庄内総合との敗者復活戦では無失策と、冬の努力を数字に結びつけた。1年秋以来の公式戦は「すごく楽しかった。みんなもすごく楽しそうだった」と、約1年半ぶりの実戦を振り返った。

最後の夏を戦えなかった前3年生は現在、同校4年生として勉学や高専野球に取り組む。荒井は「よく先輩方からは頑張れ! と言われている。一緒に練習する機会もあって、先輩方から刺激を受けて頑張ろうという意識はある」とエールを力に変える。橋間一彦監督(65)は「試合ができることは学生にとってうれしいこと。去年の子たちはかわいそうでしたから。とにかくはつらつとやってほしい」と全力プレーを期待した。

2年ぶり夏舞台の初戦は8日、長井と対戦する。指揮官は「大会に出られたら、とにかく1つずつ勝ち上がるしかない」と、一戦必勝で戦う姿勢だ。春の地区予選後に投手から内野手に転向した渡部彗梧(3年)は「投手がダメだったら野手が打って、野手が打てなかったら投手が踏ん張ってチーム全員で勝ちたい」と力を込めた。全員の力を結集させて、必ず勝利を届ける。【相沢孔志】

<双子の榎本兄弟も集大成>

双子の「榎本兄弟」も、高校野球の集大成を見せる。兄邦彦内野手と弟克彦外野手(いずれも3年)は中学で野球を始め、卒業後も同じ進路をたどった。兄邦彦は「野球を楽しむことを全力で頑張る。声掛けから雰囲気をつくって守備では良いプレーを見せたい」。弟克彦は「勝利に対する姿勢を見せて、何でも良いから貢献したい」と意気込んだ。