<高校野球群馬大会:県太田2-1樹徳>◇23日◇準々決勝◇上毛新聞敷島球場

3時間41分、延長13回までもつれる死闘だった。午後0時25分に始まった試合は、灼熱(しゃくねつ)の昼下がりを越え、夕日が差し込む同4時6分に終了。両チームとも無失策。ともに好機はつくりながら、あと1本が出ない。いや、打たせない。意地がぶつかり合った熱戦は、0-0のままタイブレークとなる延長13回に突入した。

先制は樹徳。無死一、二塁から始まった13回表の攻撃。4番佐藤圭隼(けいと)捕手(3年)が犠打、5番津田竜聖外野手(3年)の犠飛で1点を先行した。

13回裏。県太田も樹徳と同じく4番からの攻撃で、川緑健太内野手(3年)が左翼線へサヨナラ2点適時二塁打。強攻策が実って、激戦に終止符が打たれた。

サヨナラ勝利の直前。県太田の一塁側ベンチでは、6回まで無失点と好投して降板していたエース大舘陽七薫(ひなた=3年)が、岡田友希監督(44)の元へ寄ってきた。「川緑、(相手投手の投球にタイミングが)合ってきています。監督、打たせてください」。岡田監督はすぐに川緑に「どうだ?」と声をかけると、川緑も覚悟を決めていた。犠打をさせるつもりだったが、「任せるしかない」。信頼する4番を送り出していた。

昨秋の新チーム発足時から4番を打ち続ける川緑は「チームを勝たせるのが4番」と自負する。ただ、この日は好機で打つことができていなかった。「チャンスで打てなくて、チームに迷惑をかけていたので、ここは自分が打つしかない」。強い気持ちを込めて、打った。

無念の途中交代を強いられた沢田大和主将(3年)のためにも打ちたかった。遊撃手としてスタメン出場していた沢田は12回の守備中に足をつった。1度、タンカで運ばれたが、走って定位置へ戻ったが…再びその場で倒れた。再びタンカで運ばれて交代となった。「沢田には、チームが始まってから迷惑をかけっぱなし。引っ張ってもらっていたので、自分が打って次の上の舞台に連れていきたいというのはありました」。試合後、沢田主将はうれし泣きしていた。

川緑は「三塁コーチャーの竹田が回してくれたので感謝です」と、好判断の竹田凌(3年)にもお礼を言った。一塁走者の生還はギリギリのタイミングだったが、竹田は「一塁走者の高瀬は足が速い。焦ると送球が浮くというデータもあったので回しました」。竹田は今大会初戦で右腕に死球を受けて骨折。ギプスを付けながら、懸命にチームのために役目を全うした。

選手が能動的に機能して好ゲームであり、厳しい戦いを乗り越えた県太田が94年以来、27年ぶりの4強入りを決めた。準決勝の相手は前橋育英。今春の県大会では勝利している。岡田監督は「この勢いで。(前橋)育英さんも本気で来ると思う。序盤からゲームをつくっていけると、向こうも慌ててくれたり力んでくれたりするかなと。春はたまたま勝たせてもらえたけど、我々はチャレンジャーなので。疲れは心配ですけど、あとは気力と精神力で」。次戦もチーム一丸となって勝利をつかみにいく。