最後の打者の打球が左翼手のグラブに収まるのを見ると、淑徳・伊神遥貴投手(2年)は喜びを爆発させた。グラブを外した右拳を握りしめ、チームメートたちが待つベンチへ駆けた。8強進出は同校初の快挙だ。

劣勢での登板で仕事を果たした。2-4の3回1死三塁、先輩右腕の中村が打ち込まれた後を受けた。「エースからの交代で、怖かったです。プレッシャーもあって。でも、チームとして初のベスト8を狙う試合。緊張したけど、チームの支えが自分を押してくれました」。後続を犠飛による1点のみに抑えた。

投手に転向したのは、高校に入ってからだ。チームに左投げ投手がいなかったため、左利きの伊神に白羽の矢が立った。最初はオーバースローで投げたが、ボールが荒れに荒れた。夏の終わり頃、中倉祐一監督(44)やコーチの助言を受け、サイドスローにした。すると、制球が安定。投げ方があっていた。

直球は110キロに満たないが、スライダーとのコンビネーションで打たせて取った。同じサイド左腕の日本ハム宮西の動画を参考に、球のキレ、制球を磨いた成果を出した。4回以降0を重ねるうちに、味方打線がじわじわ加点。そして、1点差に迫った8回、敵失や暴投が重なり、2得点で逆転した。伊神は「チームを信じていました。絶対、逆転してくれると」とニッコリ笑った。中倉監督は「完璧なリリーフだった」とたたえた。

準々決勝はシード校の二松学舎大付が相手だ。学校の歴史をさらに塗り替えるため、伊神は「次も期待に応えるしかありません。自分たちの流れをつかんで、一気に勝ちたい」と意気込んでいた。