102チームが参加した南北海道で、北海が札幌日大を8-6で破り、4年ぶりの優勝を果たした。

プロ注目のエース木村大成(3年)が6回6失点で降板したが、今年初登板の背番号10、吉野龍生投手(3年)が3回無失点の好救援。打線も1点を追う8回裏に内野安打、敵失などで逆転し、全国最多を更新する39度目の夏甲子園切符をつかんだ。10年ぶりの春夏連続となる聖地では、1回戦でサヨナラ負けしたセンバツの雪辱を目指す。

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苦しみ抜いて全員がヒーローになった。北海の2番手・吉野は9回2死、最後の打者を三振に切ると、小さく右拳を握り、体を反転し右翼を向いて両手を挙げた。視線の先には、これまで1人でチームを支えてきた木村がいた。吉野は「自分が投げて負けたら木村に申し訳ない。ゼロで抑えられて良かった。最後に自分がマウンドにいることが夢みたい」。後から涙を流し駆けつけた木村と抱き合い、喜びを分かち合った。

絶体絶命のピンチを乗り切った。頼みの木村が6回8安打6失点。5-6と逆転された後、平川敦監督(50)は春に右手首、今夏地区予選前に右肘を負傷し登板を回避していた吉野に白羽の矢を立てた。「まずストライクが入る。練習試合や3年間の姿勢を見て信頼して送り出せると思った」。7回から登板の吉野は、期待にこたえ3回2安打無失点と好投し勝利を呼び込んだ。

木村を救おうと、野手も奮起した。センバツ敗戦後、平川監督は「木村におんぶにだっこじゃ夏は勝てない。打って木村を楽にしてあげないと」と強く諭してきた。そんな中、春は全道初戦で旭川大高にサヨナラ負け。8安打も4得点にとどまった。尾崎は「当番校作業中に、札幌日大が優勝する姿を見て、僕らにはつながりが欠けていると感じた」。この日、8回1死満塁では同点の三塁内野安打を放ち一塁にヘッドスライディング。北海では負傷回避のため禁止されているが「後ろにつなぎたくて、ついやってしまった」。謙虚に春王者から学んだ姿勢を夏に生かした。

主将の宮下は「木村は、きのうも相当投げていて疲れもたまっていた。今日は全員で頑張ろうとやってきた。最後に勝てていたことがうれしい。甲子園ではセンバツの悔しさを晴らしたい」と言った。投打ともエース頼みから脱却。春から生まれ変わった姿を、夏の聖地で披露する。【永野高輔】

▽木村、吉野をリードした北海・大津 ほっとした。(春の)全道大会で当番をしているときは、どうしてここにいるんだろうという思いでいた。甲子園では、できることを全力でやりたい。

▽3安打の北海・山田 みんなでつないで勝てたことがうれしい。春全道は1回戦負けだったが、そこから切り替えて取り組めたことが良かった。

◆北海道勢の春夏連続甲子園 13年北照以来、通算20度目。9校が達成しており、北海が最多を更新する8度目(38、53、54、60、62、64、11、21年)となった。ほか南北海道勢では、駒大苫小牧(03、05年)函館大有斗(74、97年)が2度。52年函館西、72年苫小牧工、75年北海道日大(現北海道栄)、78年東海大四(現東海大札幌)が成し遂げている。北北海道勢では08年に駒大岩見沢が達成し、南北海道に属していた83年に続き2度目だった。