優勝決定の直後だった。東海大菅生ナインが若林弘泰監督(55)にウイニングボールを手渡した。「もらいました。うれしいもんです」。めったに選手をほめない監督が相好を崩した。

強打で春夏連続の甲子園を奪いとった。3-3で迎えた4回1死一、三塁。1番の千田光一郎外野手(3年)が3ランを放った。「(前の2打席は)外のスライダーをひっかけていた(遊ゴロ、遊ゴロ)ので、逆方向を意識して打ちました」。打球は意識とは逆の左方向ながら、舞い上がってスタンドで弾んだ。

2年前の準決勝で1-3で敗れた相手だった。千田は神宮の応援席で先輩の姿を見た。「あこがれていた3年生が勝てなかった。厳しさを学びました」。敗退後、国学院久我山のチャンステーマが何度もよみがえったという。「リベンジするときが来た。やり返そうと思って、ずっとやってきましたから」。若林監督も前日1日、こう話していた。「2年前の倍返ししたい。力の7、8割を出せばもっと打てるんですよ」。2本塁打を含む13安打で8得点。倍返ししてみせた。

先発の本田峻也投手(3年)が2点の先行を許す予定外の流れは、野球部寮で本田と同室の3番堀町沖永外野手(3年)が変えた。3回に同点のランニング2ラン。「本田の目が死んでいたんで、自分が変えよう、と打席に入りました。(左中間を)抜けたのが分かったんで(本塁に)行きました」。若林監督が付け加えた。「ウチは千田と堀町が打てば、こういうゲームになるんです」。

今春のセンバツは準々決勝で中京大中京に完封された。千田が言った。「忘れ物を取り返しに行く。日本一になりたいです」。舞台が甲子園に移っても、東海大菅生は「やり返す」の思いをそのままに、勝利をつかみに行く。【米谷輝昭】

▽国学院久我山・尾崎直樹監督(2点を先行しながらの逆転負けに)「序盤勝負だと思った。選手は集中してよくやってくれた。高橋に疲れはあったと思うが、彼の投球術にかけて先発させた。3ランは伝令を送った直後の初球、監督の力のなさです」