エンゼルス大谷翔平投手(27)のア・リーグMVP受賞を受け、花巻東時代の恩師である同校の佐々木洋監督(46)が都内で喜びを語った。

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-今の花巻東のチームに大谷先輩がいる影響は

佐々木監督 指導者として一番幸せだと思っているのですが、大谷に限らず、菊池雄星もそう。野球選手としてだけじゃなく素晴らしかった。私が現場にいて、指導しやすいです。例えば、大谷は勉強も全教科、評定が85点ぐらいでした。「大谷は野球がすごかっただけじゃないよ。勉強もすごかったよ。寮の掃除もしてたんだ。書き物もそうだし、提出物も」(と言える)。生き方自体が素晴らしいので。野球だけがこうだと、野球だけ子どもたちも目指すものがあると思う。(大谷は)重箱をつついても(悪い点が)出てこなかったです。正直、あれだけの選手ですから、チームを締めるとき、あれぐらいの存在の選手を締めた方がパッと締まるときもあるのですが、あら探しをしても全く出てこないというのが、高校時代の大谷翔平選手でしたね。勉強も、普通の生活もそうでした。教えることが何もなくて。今、思えば、よく私のところに来てくれた。感謝しかないです。

-監督がいたから花巻東を選んだのでは

佐々木監督 そういって自慢して生きていきたいところですが(笑い)。残念ながら、育てるとか何もなくて。本当に、もう自分でアップデートするタイプなので。考え方だけ、しっかり話をしながら、環境さえ与えればどんどん伸びていく。今は自分で器を変えていって、日本からアメリカとステージを変えながら、すごいレベルに来ている。育てるとかはなかったです。

-高校時代に「世界最高のプレーヤーになる」と書いたときに、どう声をかけた

佐々木監督 当時、メジャーに行くだけですごかった。高校生がメジャーを目指すのは非常識。160キロを目指すのも非常識。当時、日本では(160キロを出したのは)クルーンだけでした。私は行けると思ったんですが。菊池雄星が体重、筋力を付けたら、これぐらいになったという参考を見て、必ず出るよと言ったんですけど。その辺までは目指してやっていたんですけど、はるか向こうの。何を彼は考えていたのか。いろんな非常識を変えていっているのがすごいなと思います。子どもたちの夢は、我々の頃はプロ野球選手でしたけど、多分、子どもたちの作文を変えたんじゃないかな。メジャーの選手とか。イチロー選手も(MVPを)取っていたから、道しるべがあったのかも知れませんけど。将来、MVPを取ると作文に書いてくれる子どもたちが増えると、子どもたちの可能性が増えていくと思う。本当に素晴らしいことをしてくれたと思います。

-大谷選手はメジャーで愛されている

佐々木監督 書いていること、やってるだけじゃないかと思います。感謝するとか、ごみ拾いするとか。審判に態度で出さないとか。自分でそうなろうと思って、そうなったんじゃないかなと思います。指導したなんて恐ろしくて言えないぐらい、勉強も、人間的にも立派な生徒でした。

-彼を3年間、預かったことで気付かされたことは

佐々木監督 全てを野球に投資していたと思います。当時、日本でも免許を取らなかったりとか。特に大きい買い物をするわけでもないですし。食事のことも、今もこだわり、すごかったですけど。体重のこと、トレーニングのこと、そういう取り組む姿は、私自身も勉強させられた。教えてもらうことの方が多かった気がします。

-神宮大会への追い風か

佐々木監督 いい影響というか。今回、MVPにも選ばれて、ホームラン王の争いもあって、雄星も(オールスターに)選ばれて。後輩たちも刺激になったというか。岩手の選手でも、ああやって世界でオールスターに選ばれたり、ホームラン王を争うとか。私も想像できなかった。率や、投手で活躍することはあるかもしれませんけど。ホームランで、あの体格のアメリカの選手と競っている日本人が出てきたということは、ちょっと想像を超えてました。ただ、このことで、次に日本人でまた向こうで争う選手が必ず出てくると思います。

-神宮大会に向けて、大谷選手から言葉は

佐々木監督 うらやましいというか、本人も出られなかったので。「うらやましいです。ぜひ、頑張ってほしい」ということは話をされました。

-監督としての目標は

佐々木監督 彼、世界で一番になりましたので。私も監督になって、日本一になりたいという気持ちで指導にあたっているので、なんとか岩手中心の選手で、大谷から刺激をもらいながら目指したいなと思います。無理じゃないかとか、できないんじゃないかとか、そういう自己限定をする気持ち(を持たないこと)を彼から教えられたので。子どもたちや私自身にもいい影響を及ぼしてくれたので。日本一になれるように、負けないように頑張りたいと思います。

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