今度こそフル回転だ。秋季東北大会で初優勝した花巻東(岩手)が、20日開幕の明治神宮大会に初出場。1回戦で国学院久我山(東京)と戦う。先発、中継ぎとマルチに活躍するサイドスロー右腕、工藤翔大(2年)が完全燃焼する。東北大会初戦は打球直撃のアクシデントで、まさかの3回途中降板。一方、復帰戦の決勝は3番手で4回完全投球でリベンジに成功した。今大会はフォア・ザ・チームに徹し、日本一の原動力になる。

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全国舞台で大車輪の働きを見せる。工藤は「自分たちは明治神宮大会優勝を目指しています。どこのタイミングでもいいので、とにかくチームが勝てるようなポジションで投げて貢献したいです」。右サイドから投げ込む直球は最速134キロ。スライダー、カーブ、シュート、チェンジアップを自由自在に操り、国学院久我山打線をテンポよく打たせて取る。

無念の降板となった。東北大会初戦の東日本国際大昌平(福島)戦ではワンバウンドした投ゴロ(記録は内野安打)が左足を直撃。3回途中でエース左腕、万谷大輝投手(2年)にマウンドを託した。一時的な打撲で次戦以降は登板可能だったが、準々決勝、準決勝で出番は訪れなかった。

決勝の聖光学院(福島)戦で復帰し、3番手で4回を無安打無四球無失点。「聖光学院さんを抑えられたのは自分の収穫になりましたが、決勝まで万谷に任せきりになってしまったのは、ふがいなかったです」。35球で打者12人を完全投球。優勝投手になったが、悔しさも残った。

名門で生き抜くために決断した。久慈中時代はスリークオーターだったが、高校入学直後に「自分は身長がなく、どこかで角度をつけて勝負しなければと考えたときに上だと角度がないので」とサイドスローに転向。「横の変化球と横の角度で、打者の体勢を動かして打ち取っていく」スタイルになった。右打者を得意のシュートで詰まらせる投球が調子のバロメーターだ。

自身のヒーローは同校OBのマリナーズ菊池雄星投手(30)だ。左右も違えば投球スタイルも違う。それでも「マウンドでの立ち居振る舞い、気迫がすごく憧れます」と目を輝かせる。「花巻東は雄星さんの代からセンバツ準優勝、夏ベスト4とか少しずつ歴史を変えてきました。最近は全国でなかなか勝てていないので、どうにか自分たちがもう1度歴史をつくり、その後の花巻東につなげられるようにしたいです」

神宮のマウンドで必死に右腕を振り、勝利をたぐり寄せる。【山田愛斗】

◆工藤翔大(くどう・しょうだい)2004年(平16)5月17日生まれ、岩手県久慈市出身。小学2年で野球を始め、主に二塁手でプレー。小学6年で投手転向。久慈中では軟式野球部。花巻東では2年秋の地区大会からベンチ入り。趣味は読書。175センチ、74キロ。血液型B。右投げ右打ち。家族は両親と弟。