今春もコロナ辞退…。第94回選抜高校野球大会(甲子園)の大会本部は17日、新型コロナウイルス感染を調べる大会前のPCR検査で、13人の陽性が確認された京都国際が出場を辞退すると発表した。

【センバツ】京都国際、新型コロナ13人陽性で大会参加を辞退 近畿補欠1位の近江繰り上げ出場>>

同校が同日に申し入れ、本部が受理した。今秋ドラフト候補の左腕エース森下瑠大(りゅうだい)投手(3年)を擁し、今大会の有力校だった。近畿地区の補欠1位校の近江(滋賀)が繰り上げ出場し、19日の第2日第2試合で長崎日大と対戦する。

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センバツ開幕前日の甲子園に衝撃が走った。本番を待つだけのはずの午後6時半。大会本部の緊急会見で明かされたのは京都国際の出場辞退だった。日本高野連の宝馨会長(65)は「明日の開会式を控えた、この段階で生徒の心情を察しますに言葉もありません。主催者としましては誠に無念です」と沈痛な表情で話した。

急転直下の辞退に映るが、実はコロナ禍が忍び寄っていた。先週末の12日以降、組んでいた練習試合が相次いで中止になっていた。14日に大会前PCR検査を受けた31人中、8人が陽性と判定され、2人はその後に発熱。19日に長崎日大戦を控え、15日に宿舎入りしたが、16日のPCR検査で新たに5人が陽性になった。緊急対策本部会議で3度、審議。大量13人の陽性者が出てチーム内の集団感染と判断された。

試合2日前の17日朝、京都国際は日本高野連に書面で出場辞退を申し出て、受理された。朴慶洙(パク・キョンス)校長は「一心に野球に打ち込んできた子どもたちのことを思うと、下したくない決断ではありました」と胸中を吐露。生徒の健康や感染拡大防止のため、苦渋の決断を下した。

優勝候補の一角だった。今秋ドラフト有力候補の森下は注目株だ。昨年のセンバツで甲子園に初出場して夏は4強に躍進していた。今大会前の辞退で、出場回数にカウントされない。コロナ禍でのセンバツ辞退は史上初のケースになった。

他の出場31校のPCR検査では3校6人も陽性となったが、個別感染で出場可能と判断された。今後も予断を許さない。13人の陽性者のうち、会見時に発熱は2人…。やるせなさは募る一方だ。近江はそのまま19日に長崎日大と戦う。宝会長は「京都国際の生徒たちは大変残念ですが夏に向けて、また頑張っていただきたい」と呼び掛けた。全力を尽くし、喜びも悔しさも味わえない悲劇がまたも繰り返された。【酒井俊作】