札幌など6地区で開幕した。札幌地区1回戦で札幌北が石狩南を8-2で下し、初戦を突破した。先発した背番号8の左腕、稲原永久(とわ)投手(2年)が9回113球2失点(自責1)と公式戦初完投で勝利に貢献した。同校は今年で創立120周年。節目の年に春は02年以来20年ぶりとなる全道大会出場へ好発進した。

稲原は最後まで表情を崩さず落ち着いていた。9回2死で最後の打者を遊ゴロに打ち取った後も、静かに喜びをかみしめた。公式戦初完投勝利。「今日はいつもよりストレートが走っていた。1試合を通してピンチもあったけど、そこで踏ん張れたというのは自信になる」とうなずいた。背番号8の左腕を先発起用した森田有監督(46)は「要所要所で頑張ってくれた」と目を細めた。

地元平取を離れ、道内有数の進学校に入学した。今は札幌市内に部屋を借り、1つ下の妹とともに生活をしている。昼の弁当は毎週末母智子さん(44)が仕込んで冷凍しておいてくれる料理をつめて学校に通い、朝と夜は自炊する。「料理はアスリートとしてしっかりしなきゃいけないので、意識しています。得意料理は豚キムチ」。徹底した自己管理のもと、体重はひと冬で4キロ増の67キロと、ひと回り大きくなった。

実家は平取の牧場で、競走馬の生産と育成を行っている。幼少期から馬のそばで走り回りたわむれながら育った。この日観戦した父稔久さん(45)と母の前での白星に「来てくれていたので勝ちたかった。よかったです」とほおを緩めた。

目標とする先輩の存在を刺激にする。プロ注目の東海大札幌エース左腕門別啓人(3年)とは中学時代、日高の合同チームでともにプレーした経験がある。「別格でした。投げる球も打撃もすごくて飛び抜けていた。ずっと憧れで、追いかけてきた存在」という。

昨秋の地区大会東海大札幌戦では先発したが2回途中でKOされた。「実力不足でした」とメッセージすると「まだまだこれから。もっと強くなって」と励まされた。以降マウンドで投げ合うことを目標としてきた。今大会は互いに勝ち上がれば地区ブロック決勝で対戦する。「決勝まで行って投げ合いたい」。その日まで負けるわけにはいかない。【山崎純一】

○…公式戦初の4安打固め打ちで勝利に貢献した札幌北・皆川大樹主将(3年) 4本打てたことよりも、まずは1打席目で1本出たことがうれしい。次もチームが勝つために活躍できるように頑張りたい。