ニッカンスポーツ・コムの会員限定サイト「日刊スポーツPREMIUM」では、各担当記者による書き下ろし記事「ストーリーズ」を随時更新しています。

毎週水曜日の日刊スポーツ紙面では、裏面で各ジャンルの「ストーリーズ」記事を掲載中です。

18日の紙面には甲子園で最も勝った監督、前智弁和歌山監督の高嶋仁さん(75)が登場します。春夏通算68勝を挙げた名将が、少年野球の指導で大切にしていることとは。記事は「日刊スポーツPREMIUM」でも公開中です。

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東京アマチュア野球担当キャップ・保坂恭子記者の取材後記です。

 

◆取材後記 「教える」というよりも「問いかける」。そんな高嶋さんの姿勢が、すごく印象的でした。アドバイスをするような口調で、練習をする選手たちの間を回っていました。

午前中の練習が終わった時、ミーティングが行われました。どんなことを言われるのか、待っていた選手たちは、たぶんびっくりしたと思います。輪の外で聞いていた私も、思わずメモを取る手が止まりました。「勉強してね」と話し出したからです。野球の技術や、練習メニューについての話ではなくて、勉強の話…?

その意図を聞いてみたくて「勉強もしてね、とおっしゃっていましたよね?」と聞きました。そうしたら、高嶋さんから「勉強も、じゃないんよ」とやわらかく訂正されました。

「勉強の合間に野球なんよ。今は逆になっているでしょう? 野球の合間に勉強になっている。僕は違うと思うんよ」

確かに、学生の本分は勉強です。野球はあくまで、部活動。部活に熱中することは学生時代にしか味わえない醍醐味(だいごみ)だと思いますが、勉強に時間を費やすのもまた学生だからこそ。普段、野球だけを取材している私自身にとっても、1つの気付きでした。

この言葉が、選手の野球人生の選択肢を増やすチャンスになるかも。高嶋さんの、子どもたちへの大きなプレゼントを目撃した気持ちになりました。【保坂恭子】