盛岡中央(岩手)の鉄腕エースが08年以来14年ぶりの決勝進出を呼び込んだ。プロ注目の最速152キロ右腕、斎藤響介投手(3年)が147球の熱投。昨秋から3季連続県Vを狙った花巻東を9安打2失点で完投し、7三振を奪った。高校通算74本塁打の2年生スラッガー、佐々木麟太郎内野手との注目対決は2安打を浴びたが、要所を締めた。1人の投手で「1週間500球以内」の制限があり、斎藤はここまで367球。25日の一関学院との決勝では残り133球に魂を込める。

      ◇      ◇

クールな斎藤が感情を爆発させた。1点リードの9回2死走者なし、カウント2-2からの6球目。最後の打者を117キロスライダーで左飛に打ち取ると、右手でガッツポーズ。仲間と抱き合って歓喜した。過去4試合は拳を突き上げることさえなかった。それでも優勝候補に競り勝ち、喜びがこみ上げてきた。

「やっぱり花巻東は春に甲子園に行ったりして『強豪』と言われているので、そこを倒した喜びが結構大きいです」

直近4戦で28回2/3を4安打1失点で40三振。防御率0・31、奪三振率12・56と抜群の安定感を誇った。20日からの4日間で3試合のハード日程も「肩の痛みは全然なくて、いい感じでした」。スタミナ自慢らしく問題にしなかった。

この日の最速は149キロで5回までにソロ本塁打含む6安打2失点。佐々木麟にも2安打を許し「オーラがあって、少し怖かったが、自分のピッチングができた」。相手先発は9人中7人が左打者で、内角攻めを徹底。打たせて粘投した。

休日は12時間以上寝ることもある。趣味はゲームで、特技はペン回し。おっとりした性格だ。ただ、マウンドでは速球派に変身し、小学校時代からバッテリーを組む小笠原颯汰捕手(3年)も「こういう人がプロに行くんだな」と力強いボールを連発する。盛岡中央の甲子園出場は99年夏が最初で最後。斎藤は「決勝も接戦になると思う。0でどんどん進め、甲子園に出場できるように頑張りたいです」。泣いても笑っても、残り133球。23年ぶり聖地へ、もうひとつの山を越える。【山田愛斗】