ノーシードの盛岡中央が大金星を挙げた。優勝候補筆頭の花巻東に3-2で競り勝ち、99年以来となる23年ぶりの夏の甲子園までマジック「1」となった。2-2の同点で迎えた7回1死二塁で、三上拓夢外野手(3年)が値千金の決勝打。甘く入った直球を逃さず、左越えに適時二塁打を放ち、勝利の立役者となった。決勝は明日25日に一関学院と対戦。獅子奮迅の快進撃を続けるナインが、クライマックスを迎える。

芯で捉えた打球が左翼手の頭上を越えていく。沸き立つ三塁側ベンチに向かい、三上は二塁ベース上で右こぶしを何度も突き上げた。「1点がほしい場面で1本打つことができた。鳥肌が立った」。優勝候補・花巻東を撃破。自らのバットで大金星をたぐり寄せ、08年以来14年ぶりのファイナルへと導いた。

「サウスポー対策」が功を奏した。2-2の同点で迎えた7回1死二塁。4回途中からマウンドに立つ相手エース、万谷大輝投手(3年)と対峙(たいじ)した。「つなぐ意識で、甘い球だったら積極的にいこうと思った」。カウント2ボールからの3球目。真ん中高めに浮いた直球を迷いなく振り抜いた。「左投手を先発で想定していた。対策していた通りに打つことができた」。打撃練習から左投手のイメージはつかんでおり、準備は万端だった。

「お前がヒーローになれ!」

打席に立つ前、そう言葉をかけられ、奮い立った。「絶対に勝ちたい。絶対に打ちたいと思った」。最後は執念が勝った。先発した最速152キロ右腕、斎藤響介投手(3年)は147球の力投で9回を9安打2失点の完投。後ろを守る野手として援護しないわけにはいかなかった。三上は「ロースコアの展開になると思って(斎藤)響介を助けたかった」。その一心が決勝打につながった。

憧れの夢舞台へ、あと1勝とした。「全員で勝利をつかみにいく」。手の届くところまで、破竹の勢いで勝ち上がってきた。ノーシードからの下克上Vを完結させ「夏の岩手」を締めくくる。【佐藤究】