山田がマウンドに帰ってきた。センバツ準優勝右腕の近江・山田陽翔(はると、3年)が今夏初登板で快投した。複数投手で夏を乗り切る狙いで、ここまでの2試合は右翼で出場したが、満を持した先発で昨秋県8強の伊吹を6回2死までパーフェクトに封じた。自己最速タイの149キロをマークし、6回を1安打9奪三振無失点。8球団14人の編成担当をうならせた。

6回2死。遊撃前に飛んだ打球は不規則なバウンドで初安打を許した。だが、すぐにがら空きの二塁へ走りかけながら、内野手にカバーを指示。9点差があっても油断はなく、ついえた“完全試合”への未練もなかった。エース兼4番兼主将らしい振る舞いだった。

「ようやく目に見える形でチームに貢献できました」。そんな山田の笑顔を見ながら、多賀章仁監督(62)は「(昨夏と今春甲子園で戦った)大阪桐蔭に対しても伊吹に対しても、投球が変わらない。1球1球に魂がこもっている。伊吹の福井君が頑張っていた。そういうものが心に響く。相手への敬意がある」と感心。全国であれ、県のライバルであれ、全力でぶつかる。それが誇らしかった。

3季連続の大舞台にあと2勝。「150キロを出すのは甲子園かな」と大台への思いを明かし、「やっと夏が始まったという気持ちです」と笑った。【堀まどか】

▽広島田村スカウト部課長「山田君の投打への球場内の反応を見ても、すごく人気があるのが分かる。投打、走塁、すべてに素晴らしい選手です」

▽阪神筒井アマスカウト「どんなときでも何があっても、山田君にはぶれない気持ちの強さがある。それが投球に表れています」