<高校野球西東京大会:日大三12-1富士森(5回コールド)>◇29日◇準決勝◇神宮球場

「都立の星」富士森の快進撃が止まった。創部初の4強入りを果たし、勢いそのままに臨んだ日大三との準決勝。強打の相手は手ごわかった。初回に8安打を浴びて10失点。「日大三は良いバッターばかりだな」。二塁を守る小牧颯太主将(3年)は、鋭い打球に脱帽するしかなかった。

1年前は自分たちが準決勝の舞台に立っているとは想像もできなかった。新チームになって間もない8月。都立校との練習試合で30点近い大差で敗戦し、広瀬勇司監督(59)から「史上最弱の代だ」と発破をかけられた。その言葉に火がついた。小牧はそれまで、フルスイングにこだわっていたが、「それではダメだ」と内省し、バットを短く握り始めた。気づけば、仲間もコンパクトなスイングを心掛けていた。しかし、昨秋と今春の都大会はブロック予選敗退。結果が伴わず、下を向きそうになったが、朝6時に学校に集まり、バットを振り続けてきた。

迎えた今夏。努力は実を結んだ。40年ぶりの8強に進出すると、神宮球場で1勝を手にし、史上初の4強入りを成し遂げた。選手たちの成長に目を細めながら、広瀬監督は実感を込めた。「厳しいことも言ったが、今はありがとうという言葉に代えたい」。史上最弱の代の快進撃は、奇跡ではない。諦めずに努力したからこそ、たどり着いた4強だった。【藤塚大輔】