33年ぶり2度目出場の日大三島が、夏の甲子園初勝利を逃した。開幕戦で国学院栃木(栃木)に3-10の逆転負け。今春のセンバツに続き、初戦で姿を消した。4回までに3点を先取したが、先発のエース松永陽登(はると、3年)が4回1/3 6安打4失点(自責点2)で降板。守備の乱れも響き、流れを失った。県勢としても、3大会連続(中止の2020年を除く)の1回戦敗退となった。

日大三島の夏が幕を閉じた。7点を追う9回2死走者なし。代打の島田誠也内野手(3年)が空振り三振に倒れ、試合終了。今春センバツの雪辱、夏の甲子園初勝利を目指したが、結果は完敗だった。加藤大登(ひろと)主将(3年)は「春のセンバツ同様、自分たちの野球をやらせてもらえなかった。とても後悔が残る」。ナインは、ぼうぜんとグラウンドを見詰めた。

3-0の4回。失策と悪送球絡みで同点とされた。今夏の県大会は6試合で、わずか2失策。堅守にほころびが出ると、歯車が狂った。直後の5回、無死満塁の好機でクリーンアップが凡退。その後は失点を止められなかった。加藤は「1つのミスで流れが悪くなり、断ち切れない自分たちの弱さが出てしまった」と悔やみ、唇をかんだ。

今春のセンバツでも、1回戦で金光大阪に0-4で敗戦。校歌を聖地に響かせることはできなかった。それでも、永田裕治監督(58)は「負けは監督の責任。チーム結成当初は、ここまで来られるとは思っていなかった。2度も甲子園に連れて来てくれた3年生には感謝しかない」。2020年春の就任から共に歩んできた教え子をねぎらった。

「夏の甲子園1勝」の悲願は、後輩たちに託された。この日、先発メンバーには5人の1、2年生が名を連ねた。4回には永野陽大(ひろ)外野手(2年)が左中間適時三塁打を放ち、竹田皓晴投手(1年)も3番手として大舞台のマウンドを経験した。永野は「スタンドも含めて全員が1球の怖さを感じたはず。新チームでは、練習のノックから1球をもっと大切にしていきたい」と誓った。悔しい敗戦から得た成長の糧。無駄にはしない。【前田和哉】

■ピンク色応援団「春とは違う」

一塁側の応援スタンドは、ピンクに染まった。日大三島の保護者やOBなど約1800人が詰めかけた。石井優大応援部部長(3年)は、伝統の黒いはかま姿で演舞した。春夏連続出場だが「センバツと球場全体の盛り上がりが違う」と体感。今夏は県大会1回戦から応援しており「永田監督の“全員野球”は、スタンドも含めて全員で試合をつくっていく姿勢だと思う」。感染対策で声を出せないため、メガホンやスティックバルーンをたたいて精いっぱい応援したが、逆転負け。それでも「選手たちは輝いていました」と目を細めた。

■「お疲れさま」学校会議室で応援

三島市内の日大三島高大会議室からも、甲子園に向けて声援を届けた。生徒や保護者、教員ら約30人が、国学院栃木戦をテレビ観戦。4回表に2点が入り、3-0とリードを広げると、ピンクのメガホンをたたいて喜んだ。その後、逆転されたが、応援を継続。敗戦が決まった後は、全員で惜しみない拍手を送った。生徒会執行部員の武富葉月さん(2年)は「『甲子園(出場)をありがとう』という気持ち。1、2年生の選手は、また甲子園に行ってもらいたい」と願った。ラクロス部に所属し、野球部と同じグラウンドで練習するという矢島菜々子さん(2年)は「『お疲れさま』と声をかけたい」と選手らをねぎらった。