<全国高校野球選手権:八戸学院光星7-3創志学園>◇7日◇1回戦

創志学園が完敗し、今夏限りで退任する長沢宏行監督は「ラストゲーム」になった。5点差の9回無死二塁。指揮官は打席の木村政に何度も声を張って指示を出す。攻撃前、ナインに「粘り強く自分たちの野球をするぞ」と伝えていた。69歳のベテラン監督は、旗色が悪くても戦い抜いた。

敵失で1点を返し、意地を見せた。「弱いチームでしたけど最後の最後まであきらめない姿勢は褒めてやりたい」。絶対的なエース岡村が中盤に崩れた。得点圏に進んでも、あと1本が出ず、投打はかみ合わなかった。岡村は「1日でも長く、監督さんを日本一にしようと言ってきた。初戦敗退が一番、悔しい。申し訳ない」と唇をかんだ。

長沢監督は口癖がある。「野球を学ぶのではなく、野球で何を学ぶか」。甲子園に挑んだ日々は生きる糧になる。昨秋、父を亡くした捕手の竹本は監督に「オヤジのためにやってみろ」と後押しされた。弱気を叱ってくれる父だった。苦しいときこそ、周りにいる人を思え-。「その言葉を原動力にしてやってきました。監督は自分にとって父親代わり」と竹本。劣勢の8回、右前打を放った。この負けの意味はいつか分かる。

10年から指揮を執ってきた。東海大相模(神奈川)前監督で後任の門馬敬治氏(52)に後を託すが、熱は消えない。「年齢と情熱は違う。まだ枯れていない」。神村学園(鹿児島)監督時は05年センバツ準優勝。「全国優勝はおこがましいけど、もっと強いチームを作りたい」。西純矢(現阪神)を擁した18年以来の勝利はならず、名伯楽が区切りを迎えた。【酒井俊作】