あまりに無情な幕切れだった。4年ぶり出場の興南(沖縄)が、9回サヨナラ負けで初戦敗退となった。 最大5点差を8回に追いつかれる。9回1死二、三塁から満塁策をとったが、右翼から2番手でマウンドに上がった安座間竜玖(りく)外野手(3年)が、押し出し死球を献上した。安座間は膝から崩れ落ちる。ナインに抱きかかえられ、試合終了10秒後にようやく立ち上がれた。大声援もナインの言葉も「何も、覚えていません」。スライダーのすっぽ抜けを、涙ながらに悔やんだ。

今年は沖縄が本土復帰してから50年の記念イヤー。興南は野球で島を活気づけようと、常に沖縄野球界の先陣を切ってきた。試合前にベンチが泥だらけならきれいにし、物が散らかっていれば整頓する。我喜屋優監督(72)はその行いを「次のチームや連盟の方のためでもある。目に見えないところを大事にしたい。興南は見本になっていかないといけないん」とし、先頭に立つだけではなく「相乗効果で沖縄が盛り上がればいい」とも語っていた。

今春の大会は部員のコロナ感染で出場を辞退した。6月には南国ならではの長い梅雨に悩まされた。幾多の試練が訪れようと、島人球児の模範になってきた。それが興南のプライドであり、誇りだった。

涙を飲んだが、島を盛り上げようと奮闘した。その雄姿は沖縄本土にも必ず届いている。最後に安座間は言った。「こんな大舞台で野球ができたことは、これからの人生のためになる。しっかり、やっていきたいです、これからも」。【只松憲】

▽興南・生盛亜勇太(せいもり・あゆた、3年=先発で9回途中6失点も自己最速の148キロを計測)「自分が背負ったランナーを安座間に背負ってもらってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいです。甲子園のマウンドから見る景色はとても最高でした」

▽興南・禰覇(ねは)盛太郎(3年=主将で3安打1打点)「本土復帰50年にあたるので、自分たちが引っ張って行くと監督さんも言っていた。県民の皆さんも大きな期待があったと思っている。負けてしまい、皆さんに申し訳ないです」

▽興南・我喜屋優監督(72)(5-0からのサヨナラ負けに)「向こうの2番手の左ピッチャーが投げてくることは分かっていたし、練習からイメージは持っていたが、実際となると、センターから右の(打撃)指示が逆に、反対方向に行った。打ちあぐねた結果が最終的に逆転を許した」

【写真もたっぷり甲子園詳細】市船橋がサヨナラ勝ちで25年ぶり勝利 海星、天理、敦賀気比も初戦突破