新型コロナウイルス集団感染で出場可能となった県岐阜商は大敗の初戦敗退となった。前日の8日に登録18選手中、10人を入れ替えた。「急造チーム」は序盤から厳しい現実を突きつけられた。先発山口は不調で四球を連発し、失策も絡んで失点を重ねる。継投も効果なく3回までに8失点。早々に勝負は決まった。

鍛治舎巧監督(71)は厳しい表情で「10個の四球と4つの失策。課題を持って帰ることになった。何とかこの試合を粘って次の試合につなげられるようにと。(離脱した選手に)本当に申し訳ない」と話した。3日以降、体調不良者が続出し、5日に集団感染と判断された。部長に「辞退しようか」と相談するほどの窮地だった。エース井上悠と小西彩翔の投手2枚看板に、正捕手の村瀬海斗を欠いた。だがガイドライン改定で出場の道が開けた。

仲間の失われた夏を取り戻すため、一丸になった。療養のため岐阜に帰った選手の声が届く。無症状の小西はメールに「次の試合、自分はいつでもいける。残されたメンバーで頑張ってやってほしい。テレビの前で一生懸命、応援している」と書いた。伊藤主将にも戦友からエールが入る。「頑張って勝てよ。それより、自分のプレーを目いっぱいやって来い」。自らの無念を押し殺し、友を思う心があった。

先発9人のうち3人は交代メンバーだ。9点差の7回、高橋は右翼ライナーをダイブ好捕。「コロナでピンチ。絶対に役に立って先輩につなげようと」。2回の左前打など公式戦初出場で意地が光った。高井も2安打。ともに2年生だ。つなげなかった悔しさをこの先に生かす。【酒井俊作】

▽県岐阜商・伊藤(高校通算24本塁打でプロ注目も4打数無安打)「まさか、こんなことになると思わなかった。チーム全員で野球することができなかった」

 

<県岐阜商のコロナ経過>

◆8月3日 抽選会に主将の伊藤颯希外野手(3年)が出席。「去年の分まで勝ち上がって全国優勝を狙えるように」と意気込んだ。

◆同4日 複数選手の体調不良者が出たため、5日の開会式リハーサルを欠席すると、大会本部が発表。

◆同5日 新型コロナ集団感染と判断。鍛治舎巧監督(71)は「ここでこういうことになるのが信じられない。非常に残念」と話した。発熱や喉の痛みを訴える選手が出ているといい、「すいませんでした、とおえつする選手ばかり。君のせいではないと伝えた」。

◆同6日 大会本部が新型コロナ感染拡大予防ガイドラインを一部改定。これまで集団感染の場合、日程変更で対応する規定だったが、新たに試合前の72時間以内に陰性と確認された部員なら誰でも、入れ替えによって出場可能になる措置を導入。鍛治舎監督はオンライン取材で「ウチから(感染者を)出してしまったが異例の対応をしていただいた。感謝申し上げたい」。

◆同7日 兵庫・西宮市内で練習を再開。約20人の選手が参加し、シート打撃で試合勘をチェックした。

◆同8日 予定通り9日第4試合で社と対戦すると、大会本部が発表。登録選手18人のうち10人を入れ替えた。

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