聖光学院が福島県に歴史的1勝をもたらした。県勢は春夏甲子園で神奈川勢に8戦全敗。同校としては2連敗中の横浜に3-2で競り勝ち、対神奈川の連敗も「5」で止めた。主将の赤堀颯内野手(3年)が、2試合連続マルチ安打となる2安打2得点と躍動。5回には相手の意表を突く二盗を決め、決勝のホームを踏んだ。17年以来5年ぶりの16強入り。16日の3回戦では敦賀気比(福井)と対戦する。

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聖光学院が福島の高校野球史に新たな1ページを加えた。同校として神奈川勢に6度目、横浜に3度目の挑戦で初勝利。福島代表にとっても通算9戦目で神奈川代表から1勝を奪った。

1点差を逃げ切った。3-2の9回2死走者なし、佐山未来投手(3年)がボテボテのゴロを打たせる。遊撃赤堀が前進しながら捕球し、ランニングスロー。右拳を突き上げた主将は、アウトを確信する。一塁へのヘッドスライディングに紙一重のタイミングも、2回戦を突破した。

初回、わずか3球で先制パンチを浴びせた。1番赤堀が初球を左前打。続く高中一樹内野手(2年)も初球で犠打を決める。1死二塁、3番安田淳平外野手(3年)が初球を右前に運び、早々と赤堀が生還した。

小技で揺さぶった。2-2の5回、先頭赤堀が三塁へのセーフティーバントで出塁する。けん制を1度入れられたが、横浜の守備シフトを過去の試合から分析し、2度目はないと判断。2番高中の1球目、赤堀は投球モーションに入る前にスタートを切る。捕手が立ち上がって外したものの、二盗を成功させた。

ベンチの斎藤智也監督(59)も「このタイミングで赤堀走ったか、すごいな」と、にやりと笑うスーパープレーだった。さらに高中が右前打で無死一、三塁と好機を広げ、安田は二ゴロ併殺となったが、その間に勝ち越しの3点目。赤堀がまたしてもホームを踏んだ。

赤堀は初戦・日大三(西東京)戦の3安打に続く2安打を放った。今大会通算で8打数5安打3得点。「みんなのおかげで打たせてもらっている感覚で、自分の力で打ったヒットは今大会で1本もないです」と言い切る。「自分が(塁に)出ると仲間が返してくれる不思議な力があります」と力を込めた。

聖光学院にとって横浜は「壁」だった。渡辺元智氏(77)が監督をしていた頃から交流があり、斎藤監督は「うちは相当薫陶を受けてきた。試合でたたかれて、成長を促されてきたような間柄」と明かす。その相手からの初勝利に「個人的にはすごく意識していたし、すごくうれしいことですね」。高い壁を乗り越えた聖光学院に怖いものはない。【山田愛斗】

○…安田が今大会初安打となる先制適時打で流れを引き寄せた。1回1死二塁、狙っていたスライダーを捉え、打球を右前に運んだ。「初球から振っていこうと意識を固めて打席に入った。イメージした軌道でスライダーが来たので思い切り振った」。日大三(西東京)との1回戦は4打数無安打。ポイントを修正し、変化球は肩を開かないで打つことを意識した。きっちり打点を積み上げ、中軸に復調の兆しが見えてきた。

◆無失策試合 横浜-聖光学院戦で記録。今大会3度目。聖光学院は日大三戦に次いで2試合連続。