9回表、最後の打者を二ゴロに打ち取ると、マウンドに立つ藤代のエース大竹諄投手(2年)の目から涙があふれた。「今日は自分の力が発揮できて…うれしいです」。真っ赤に腫らした目で笑顔をつくった。

相手は今年の春夏甲子園出場を果たした明秀学園日立。「強打」が代名詞のチームにも、1歩もひるむことはなかった。「相手は打線が強い。1回のヒットは承知の上で。打たれるのは仕方ない、と心の準備ができていたので冷静に投げられました」。

100~125キロの球速帯で、両サイドの直球とチェンジアップ、速さの違うスライダーを投げ分けた。初回に先制され、毎回走者を出すも、次打者を抑えることに集中。11安打されながらも、粘り強く投げ、初回の1点に抑えた。

バックも粘り強く守った。生沢祥平監督(39)は「大竹は右打者のインコースのスライダーを見せていたので、その後の125キロの直球が早く見える。それがフライになる。対戦が決まってからは、外野を下げ、フライを打たせて、深く守った外野が捕る練習をしてきました」。ヒットを打たれながらも練習通り。藤代ペースで試合を運んだ。

1年分の思いが詰まったマウンドだった。昨秋、茨城県大会決勝で明秀学園日立と対戦。大竹は9回途中からマウンドに上がるも2/3を投げ3連打を浴び2失点。「何もできなかった自分が悔しかった」。それまでの腕を振るだけの投球から、指先を意識し、ボールの回転、質にこだわり練習。重いサンドボールを投げ、リリースポイントをしっかり確かめてから投球練習をするルーティンを身に着けた。「今日は指先の感覚が一番良かったです」と自信のマウンドにつなげた。

藤代は、春夏合わせ甲子園出場5回を誇る、公立の雄。生沢監督は「簡単に負けることは許されない。しぶとく食らい付いていくのがうちの伝統的な持ち味。今日はその粘り強さがありましたね。今日の試合で選手たちは本当にたくましくなりました」と、歓喜に沸く選手たちを見つめた。

目指すは関東大会出場。明秀学園日立を破った自信を胸に、選手たちは1つ1つ勝ち進む。【保坂淑子】