つなぎの打撃で「東北王者」に返り咲いた。仙台育英が東北との「宮城勢対決」を6-3で制し、2年ぶり12度目の優勝を果たした。

夏甲子園優勝メンバーの斎藤陽(ひなた)外野手(2年)が追加点となる2点適時三塁打を放ち、宮城大会決勝で惜敗した相手に雪辱。優勝した同校は明治神宮野球大会(11月18日開幕、神宮)に東北地区代表として出場し、2回戦で九州地区代表と激突する。

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吹奏楽部や3年生らの応援が鳴り響く中、斎藤陽が一振りで仕留めた。2点リードの4回2死一、三塁。攻撃の伝令で高橋煌稀投手(2年)から言葉をかけられた。「決めにいきすぎてるぞ。つなぐ意識でいけ」。その一言で落ち着き、引き締まった表情で左打席に入った。「自分は“つなぐ4番”というのをずっと言ってきた。つなぐ意識でいきました」。初球の外角高め直球を振り抜くと、打球は右翼にぐんぐん伸びていく。「越えろ!」。思いが乗った白球はフェンス直撃。一気に塁間を駆け抜け、三塁で右腕を突き上げた。

永遠のライバルである東北との「黄金カード」。リベンジマッチを前に、かつてのチームメートから思いを託された。準決勝で対戦した能代松陽・淡路建司外野手(2年)とは楽天ジュニアでともにプレー。2安打2四死球で4度出塁した淡路の姿に刺激を受けていた。2-1で勝利した試合後には「(淡路から)『頑張れよ』と言われた。絶対に東北で優勝しよう」と奮い立った。

負けられない試合。憧れの好打者のように、大事な場面で結果を残した。「長打も出せて打率も残せるので、すごい打者だと思います」とオリックス吉田正を尊敬し、前日15日はクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第4戦を宿泊先で観戦。先制2ランを放った雄姿を目に焼き付けた。「ホームランを打ってすごいと思いました。それを見て、明日打てると思った」と勇気をもらっていた。

チーム全体でも、つなぐ打撃で先発全員安打の11安打11四死球6得点し、3投手の継投で逃げ切った。新チームの日本一がかかる明治神宮大会。優勝すれば、来春のセンバツで東北地区に「神宮大会枠」が与えられる。山田脩也主将(2年)は「優勝だけを目指すとつまずくことがある。一戦必勝をテーマにやっていきたい」。身の丈に合った野球で、各地区王者に挑む。【相沢孔志】