「ポスト・コロナ」を実感させる甲子園だった。1日に山梨学院の初優勝で終幕したセンバツ。

19年夏以来の「声出し」応援が全面解禁になり、マスク着用も個人判断に。球場には各校の名物応援が本来の形で響き、グラウンドの選手を鼓舞した。また、タイブレーク制度が従来の延長13回スタートから延長10回に早まった。現場の反応を踏まえて、振り返った。

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慶応の延長10回2死満塁の絶好機。清原勝児内野手(2年)のアナウンスに地鳴りのような歓声が起きた。応援歌「ダッシュKEIO」が流れると、一般席まで「かっとばせよ! 勝つぞ、勝つぞ、慶応!」の大合唱に沸いた。

相手は昨夏を制覇した仙台育英。こちらも人気校だが、終盤は慶応側の声量が圧倒した。熱戦を制した須江航監督(39)は「声出しが解禁されたから、この素晴らしい試合ができたと思う」と興奮気味だった。

報徳学園(兵庫)はチャンスで繰り出す元祖「アゲアゲホイホイ」が話題になった。部員は今大会最多の97人。大きなかけ声とダンスは外野席にも広がった。2度のサヨナラ、大阪桐蔭に5点差逆転。劇勝の連続は偶然とは思えない。

堀柊那主将(3年)は「部員の多さが強み。応援の力は大きい」と胸を張り、声をからした応援団長は毎試合「苦しい時はスタンドを見ろ」とメンバーを鼓舞。一方で報徳学園は、捕れば試合終了の平凡な飛球を外野手が落球した。スタンドの熱狂は「甲子園の魔物」を呼び起こした。

東邦の「戦闘開始」、龍谷大平安「あやしいボレロ」や智弁和歌山「ジョックロック」などはかけ声があってこそ。プロ野球巨人でおなじみの作新学院「Gフレア」も甲子園の銀傘によく響いた。優勝した山梨学院の選手は「報徳学園に負けないほど山梨学院の声援もすごくてうれしかった」と声をはずませた。

生の声援、歓声が生み出す「劇空間」は選手の平常心を奪うことも、大きな力を引き出すこともあった。それが球児を魅了してやまない甲子園の真の姿なのかもしれない。【柏原誠】