日大三(西東京)を5年ぶりの3回戦進出に導いたのは、守備の男の一打だった。初回に1点先制されたがすぐさま、その裏に同点に。3回以降は毎回走者を出し、4回には満塁のチャンスをつくったが、相手投手の変化球に苦戦しあと1本が出なかった。

迎えた6回1死二塁。打席に向かう森山太陽内野手(3年)に、三木有造監督(49)が声をかけた。

「任せたぞ」

森山は大きくうなずいた。「これまで打線がつながらなかった。初球から積極的にいこう」との狙い通り、初球の低めスライダーを中前へ運び、勝ち越しに成功した。「今日は自分たちの打撃ができていなかったので打ててよかったです」。安心した表情を見せた。

大阪出身で、中学では枚方ボーイズでプレー。小さいころから、春と夏の甲子園には何度も観戦に訪れた。「いつか自分もここでプレーをしたい」。野球少年の夢は「甲子園出場」になった。

YouTubeで見た日大三に憧れ、大阪から親元を離れて入学。1年秋、打撃を買われて背番号6でベンチ入りしたが、好機に1本が打てず、2年春からは背番号14。「打撃でダメながら守備で引っ張っていけるようになろう」。ノッカー4人に1人ずつ打ってもらう守備練習で、球際の強さを磨いた。

2年秋、新チームから再び背番号6を奪い返し、レギュラーに。今春には、退任した小倉全由前監督(66)からグラブをプレゼントされ、「NO・1ショート」と刺しゅうを入れた。

守備が評価されてつかんだレギュラーだが、大舞台ではバットで貢献した。「よかったです」と笑顔を見せたが、自分の本職は忘れない。「今日は1つエラーがあったので、次は守備からチームを引っ張っていきたいです」。大舞台で「NO・1ショート」を証明するつもりだ。【保坂淑子】