第105回全国高校野球選手権記念大会は23日、甲子園で決勝戦が行われる。103年ぶりに決勝進出を果たし、1916年(大5)以来107年ぶりの優勝を狙う慶応(神奈川)が、史上7校目の夏2連覇を狙う、仙台育英(宮城)と対戦する。

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2015年に東海大相模と仙台育英で決勝を戦って以来、神奈川県勢と仙台育英の組み合わせです。ここ数年、夏の甲子園決勝は関西勢に押されがちでした。その中、連覇を目指す仙台育英の強さは立派です。

両校の投手陣を比べると、やや仙台育英の方に分があると感じます。その強力な投手陣に慶応打線がどう挑むか、そういう試合になるのではと見ています。

また、両校の準決勝のように、主導権を握るまではスクイズを絡め、少しでもリードを広げておきたい、そんな場面も出てきそうです。

仙台育英の須江監督はここまで勝ち上がってきたことを「奇跡」と表現していますが、昨年つかんだ自信は大きいはずです。攻撃面では、ここぞという場面でのバントの成功率で仙台育英に分があると思います。

両チームとも準決勝で何度かスクイズをしていますが、よく練習をしてきたと見えるのは仙台育英です。どちらかというと慶応は、パッとバントの構えをしながら投球に合わせて当てにいく印象です。仙台育英は、しっかり構えてボールをとらえようとしています。

具体的には上半身だけでバントしにいくのではなく、腰をしっかり決めてから、上半身を連動させると、ボールをとらえやすくなります。

私は三高(日大三)で指導していた際、バントをする前に「はいっ」と言えるくらいの間合いで構えなさいと、言ってきました。監督さんによって伝え方はさまざまでしょうが、投球に合わせてバントをしにいくと、成功率は低くなりがちです。

バントを絡めた1点を巡る攻防か、打ち合いになるのか。そこで勝負を分ける守備に触れます。

仙台育英は準決勝神村学園戦の9回1死一塁の守備で、三ゴロを三塁手は二塁へジャンピングスロー。これが悪送球となりました。ここは二塁での封殺を優先した確実な送球が必須という場面でした。

鍛えられた内野陣も、時折乱れます。履正社戦でも3回にエラーが続きました。大一番を前に、もう一度確認しておく必要があると思います。

そして慶応は先述した通り、バントの確実性です。ただ、これは日ごろの練習が物を言います。ただちに修正できると思わず、せめて準備を早めに、ボールに当てに行くバントはしないよう、心がけることでしょう。

両校にかける言葉は1つです。これは日大三で夏の決勝を2度経験させてもらった私の偽らざる気持ちです。

2001年、2011年。いずれの決勝でも、前日には宿舎に集まったメンバー、マネジャー、練習を手伝ってくれた3年生の全員でケーキを食べ、翌日に備えました。

心がけていたのは「いつものように」でした。西東京大会の決勝前も同じです。みんなでケーキを食べ、これまでの思いを1つにして、笑いながら時間を過ごします。

最後に伝える言葉です。「4000校もいる中で最後、この日を迎えたのはお前たちだ。1番いい野球をしよう」。

連覇を目指す仙台育英、107年ぶりの優勝へあと1勝の慶応です。両校の選手が、最後の一滴まで出し切り、勝っても負けても、やり抜いたと思える試合になるよう、私はスタンドから見届けます。(日刊スポーツ評論家)