慶応が107年ぶりに夏の甲子園を制した。2023年8月23日、長い歴史を持つ慶応野球部が重たい扉をこじ開けた。

1回に「慶応のプリンス」1番丸田湊斗外野手(3年)が、史上初の「夏の決勝先頭打者弾」を放ち、先制。さらに1点を加え、2回には再び丸田の右前適時打で1点を追加した。1点リードの5回は4安打に相手失策も絡み5点を奪って突き放した。

1888年、三田ベースボール倶楽部が発足してから135年がたつ。第2回大会で慶応普通部が優勝を果たしたときは豊中グラウンドだったため、甲子園球場での優勝は初めて。伝統と新しさを兼ね備えた慶応野球部。主将の大村昊澄内野手(3年)は「高校野球を変えたい」と言い続けた。「エンジョイベースボール」を掲げ、今大会は髪形だけでなく、笑顔でプレーする姿や「ありがとう」と感謝しながらベンチで声かけをしているのが印象的だ。「令和の高校球児」として爽やかさで話題になり、丸田は「自分たちがトークテーマを提供できているのは、目標の1つを達成できている」と話す。

いくつもの困難を乗り越えた。昨年は選手それぞれの考えと、森林貴彦監督(50)の考えがすれ違い、ぶつかることもあった。大村主将は新チーム発足後すぐにミーティングを開き「監督を信用しきって、選手も、コーチも、一体となった代を作ろう」と呼びかけ、チーム全員がうなずいた。指導者と納得のいくまで徹底的に話し合い、森林監督も「この時はどうだったの?」とささいなことでも積極的に話しかけ、意見を言いやすい環境をつくった。

「日本一の監督にしよう」。大村の言葉が現実になった。「KEIO日本一」を達成し、全国で一番長い夏にしてみせた。【星夏穂】