<全国高校野球選手権:慶応8-2仙台育英>◇23日◇決勝

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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弟気質な選手が多く須江監督から「弟ズ」と命名された仙台育英を、山田主将がまとめ上げた。夏連覇を逃した試合終了の瞬間は次打者席で迎え、整列が終わると慶応・大村主将と抱き合い健闘をたたえ合った。「悔しい気持ちはあるんですけど、高校生活最後の試合で、甲子園で、しかも慶応さんと最高の相手と戦えたことが本当に良かったです」と胸を張った。

エリート街道を歩んできた。17年には侍ジャパンU12の一員としてW杯で4位。仙台育英では1年春からベンチ入りし、同夏からは背番号6を背負うも、県大会4回戦敗退。再び主力として迎えた2年夏は甲子園初優勝メンバーとなった。もともと静かな性格でリーダータイプではないが「地獄と天国を経験している」と新主将に立候補した。

新チーム始動直後の仙台育英は、人任せで、誰かが行動するまで待つ選手が大半だった。「キャプテンが言わないといけないことは絶対ある。言えなかったらチームは成長しないし、自分も成長しない。嫌われてもいい覚悟で言ってきた」と山田主将。心を鬼にして厳しくチームメートと接した。最後は準優勝で幕を閉じたが「日本一いいチームだったと思います」。最高の仲間と戦った夏に後悔はない。【山田愛斗】