4強入りした高崎健康福祉大高崎(群馬)は“そんなこと”を徹底している。

両投手のボール球が少なく、かつ仕掛けも早い。山梨学院との関東対決は、4回裏終了時点でまだ39分経過というハイペースで進んだ。

ともに元プロ野球選手を父に持つ高山裕次郎内野手、田中陽翔内野手(それぞれ3年)の二遊間コンビが計14個のゴロをさばき、甲子園の黒土を制圧した。

高山は冬に外野から二塁に転向した。「土が硬くて、ボコボコになりにくいし怖さがないです。イレギュラーも少なくてて」。聖地で10個のゴロを完璧にさばき、二塁守備を「すごく楽しいです」と言えるようにまでなった。

低反発バットの影響で、詰まったゴロが増えた。二遊間は特に前へのダッシュが肝になる。5回、先頭打者の遊撃へのゴロは象徴的。田中はしっかり足を動かしてさばいた。「準備もできていたので」。

実は直前の4回裏の攻撃、2死満塁を無得点で終えた瞬間、田中はベンチからダッシュした。普通ならベンチで「あ~」と天を仰ぎそうなところ、田中は駆け出していた。3アウトの11秒後にはもう、ショートの位置に立っていた。

12年ぶりのベスト4入り。青柳博文監督(51)は「(12年前より戦力は)断然上」というほどのタレント軍団だ。そこでスキを見せないよう、技術以外でも圧倒できるよう、生方啓介野球部長(42)と赤堀佳敬コーチ(30)が攻守交代時の全力疾走を口酸っぱく言い続けてきた。

9イニングなら1試合18度の全力疾走になる。赤堀コーチは言う。

「選手たちによく言うんです。『そんなこと、にもこだわりなさい』と。そんなことに? って言われるくらい徹底力をもってこだわっていこうと。試合に勝たせていただくにしても、勝ちに対して価値をつけられるチームじゃないと日本一になっていけない」と大会中も訴えかけた。

その赤堀コーチは大会後、4月から磐田東(静岡)の監督に就任する予定だ。すでに報告を受けている選手たちは「赤堀さんのために」と帽子つば裏に書く。そんなことの徹底に、損なことはない。強い組織がきっと、最後に勝てる。ちゃんと示してから師を送り出す。【金子真仁】

◆高崎健康福祉大高崎の二遊間の父 二塁高山の父は広島、西武の内野手だった高山健一氏(52)で現在は広島スカウト。遊撃田中の父はロッテ、ヤクルトで投手だった田中充氏(48)。