昨秋明治神宮大会王者の星稜が、4強に勝ち上がった。石川県勢初の大旗取りにあと2勝に迫ってきた。

元監督の山下智茂名誉監督は、情熱的な指導で星稜を甲子園常連校に育て上げられた。そんなお父さんの背中を見て来られたのが、山下智将監督だ。高校時代は監督と選手の関係。私も経験があるが、「親子鷹」の監督がわが子を特別扱いせず、厳しく接しても、子どもは周囲に遠慮する。山下監督もいろんな気遣いをし、チームを率いる今の下地を作ったのではないか。

能登半島地震で被災した地元の思いを感じながら、準決勝以降も戦う。昨秋王者ならではの自信を随所に感じさせる好チーム。気負うことなく臨んでほしい。

対する高崎健康福祉大高崎はもともとすぐれた機動力を持つが、今大会では打撃技術の高さが目を引く。バットのヘッドが下がらず、しっかりボールを上からたたいて、野手の間を抜く鋭い打球を飛ばしている。総合力が高い。

投手力では、報徳学園・今朝丸君に目を見張った。左打者の内角、右打者の外角へぶれることなく、あれだけ直線的に投げ込める投手を久しぶりに見た。好投手を伝統の堅守が支える。日頃の鍛錬の成果を感じさせる報徳学園のようなチームの進撃は、全国の野球部にとっても励みになる。対戦相手の中央学院も蔵並君、颯佐君、臼井君ら強力な投手陣をそろえる。遊撃手でもある颯佐君は、しっかりした投げ方をしている。このカードも楽しみだ。

新基準のバットが導入されたセンバツ。「芯で捉えないと飛ばない」と言われる新バットの導入は、バットの正しい扱い方を身につけるきっかけになると思う。フライボール革命の影響か、バットのヘッドが下がり、こすったような打球を打ち上げる打者が最近の大会で気になっていた。バットは振るのではなく、打つもの。相手投手が打たせまいと思って投げてくる球を捉えるには、指先でしっかり握ってつかまえにいく。基本の大事さを思うきっかけになると期待を込め、残り3試合を見守る。(PL学園元監督)