伊奈学園総合(埼玉)のグラウンドには机がある。勉強するためではない。足腰を鍛え瞬発力を上げるためだ。

 高さ80センチのほどの机に選手が両足でジャンプして跳び乗る。5回ずつ3セットを素早く繰り返す。ジャンプが低いとすねを打ち、もん絶することになる。「こええ!」「びびんな!」「キツイ!」。ハードなトレーニングだが、選手の顔には笑みが浮かぶ。

 伊奈学園総合にはユニークな練習が多い。石橋勇太監督(37)のイチオシは“新体操”トレーニング。選手が四つんばいとなり、エビフライのように片足を振り上げ股(こ)関節を鍛える。かけ声に合わせ足を動かす姿は、さながらラインダンスのようだ。

 一見、不思議な練習は偶然生まれた。雨の日、チームはグラウンドを使えない。2年前の雨の日、学校の中で練習をしていると、新体操部の練習が目に留まった。股(こ)関節を柔らかく使うためのストレッチ。前監督と当時コーチだった石橋監督はひらめいた。「股(こ)関節は打撃でも、守備でも重要ですから」。すぐさま新体操部に教えを受け練習メニューに取り入れた。

 練習の成果は打線に現れた。1番から9番まで強い打球が打てるようになり、春からの練習試合での本塁打数は20本以上と劇的に増えた。山浦衛主将(3年)は「太ももやお尻周りが太くなりました。制服のズボンもワンサイズ大きくしました」とトレーニングの効果に目を輝かせる。下半身を鍛えた伊奈学園総合が、9日開幕の埼玉大会で台風の目になるかもしれない。