<高校野球大阪大会:太成学院大高15-0守口東>◇10日◇1回戦

 近畿NO・1左腕の夏が快記録で始まった。今秋ドラフト上位候補の太成学院大高・今村信貴投手(3年)が守口東との初戦で、5回参考ながら無安打無得点を達成した。許した走者は四球の1人で10三振を奪い圧勝した。

 この日最高の1球で、夏の初戦を締めくくった。5回コールド勝ちを決めるウイニングショットは、低めへのストレート。通算10個目の三振を見逃しで取り「あの球がきょうのベストボール。それを最後に投げることが出来ました」。

 大阪桐蔭のエースだった石田寿也部長(32)から「ノーヒットノーランをやる気持ちで臨みなさい」と送り出され、4回まで1人の走者も許さなかった。5回の先頭打者を歩かせて完全投球は途切れたがそこから3者連続三振で、5回参考とはいえ高校初の無安打無得点試合を達成した。ドラフト上位候補らしい貫禄発進。中でも、春から取り組んだ成果が随所に見えた。

 外角に投じれば140キロ台後半を計測するストレートも、内角を狙ったときは135キロ。制球ミスを恐れ、外角を狙うときほど腕を振れなかった。だが、内角球を投げられなければ、強豪のカベは破れない。昨秋は履正社に敗れ、夏の前哨戦の今春は5回戦で大阪桐蔭に敗れた。相手主砲の西田直斗(3年)にスライダーを2ランにされ、試合後に号泣したほどの悔しい敗戦も、次への弾みになった。紅白戦やシート打撃で打者相手に投げるたび、内角球を意識した。135キロ止まりだった球は140キロまで出るようになった。

 この日、観戦した日米10球団スカウトも、今村のストレートを評価。「武器になる変化球を身につければ、このストレートなら近い将来戦力になる」とマリナーズ山本スカウト。ツインズ高橋スカウトも「ストレートの威力は非凡」と評した。

 昨年5月8日に交通事故で亡くなったチームメートの福長翔馬さん(享年16)を「甲子園に連れて行く」と誓った夏。故人の妹菜月さん(1年)は今、マネジャーで在籍する。「連れて行きたい…ではなく、翔馬と一緒に必ず行きます」。そのためにも、近畿最強の左腕であり続ける。【堀まどか】