<高校野球埼玉大会:聖望学園6-1羽生実>◇12日◇2回戦

 潮崎の“右腕”がチームを快勝に導いた。聖望学園が2点リードで迎えた7回裏、元西武投手で現在は同球団の編成部プロ担当の潮崎哲也氏(42)の長男で三塁コーチの至哉(ゆきや)内野手(3年)が羽生実の守備のもたつきを見逃さず、ダメ押しとなる2点ランニング本塁打を演出した。スタンドから「シオザキ」コールが湧き上がるほどの好判断だった。

 「いいぞ!

 いいぞ!

 シオッザキ!」。異例ともいえる三塁コーチへのコールが一塁スタンドからわき上がった。羽生実・鈴木智投手(3年)の前に6回までわずか3安打。相手の守備の乱れで3点をあげていたが、チームのムードは停滞。そんな空気を潮崎の“右腕”が吹き飛ばした。

 7回裏、1死二塁で迎えた打者は5番奥村大介主将(3年)。1ボール1ストライクからの3球目を思いっきり振り抜いた。打球は中堅の頭上を越える長打コース。打球の処理にもたつくのを潮崎は見逃さなかった。次の瞬間、167センチの小さい体が跳びはねた。「行けっ!」。大きく右腕を回した。奥村は三塁を蹴り、楽々生還。試合を決定づける5点目が入った。

 今年の3月、岡本幹成監督(50)から三塁コーチ専任を打診された。体が小さく、レギュラーには手が届かないものの、野球をよく知っているところを評価された。「やります!」と即答して以来、得点に直結する重要なポジションを任されている。10日の春日部工戦では6点差の場面でタッチアップをためらったが、「失敗を重ね成長している。思い切りが良くなった」と岡本監督は言う。

 父親は、消えると評されたシンカーを武器に西武の黄金時代を支えた右腕。ただ、父親と野球の話をあまりしたことはないという。それでも野球センスはしっかり受け継いでいた。「(奥村は)足が速いので狙っていた」と、会心の状況判断にニヤリ。岡本監督も「潮崎の右腕が回るときはチームが勝つとき」と信頼する。スタンドからの潮崎コールに「恥ずかしい」と笑うが、積極的なコーチングでチームを支えていく。【島根純】