<高校野球北北海道大会:滝川工3-1釧路湖陵>◇14日◇1回戦◇帯広の森

 開幕戦で滝川工が釧路湖陵を下し、4強に進出した74年以来38年ぶりに1勝を挙げた。左腕エース松井健徒投手(3年)が丁寧に打たせて取る投球で1失点に抑えると、打線も5回に1点先制し、6、8回と犠飛で貴重な追加点を奪い援護した。

 1920年創部の伝統チームが新しいチームカラー、新しいユニホームで生まれ変わった。松井は最後の打者を二ゴロに打ち取ると笑みを浮かべて伊藤捕手に歩み寄り、グラブタッチを交わした。整列して校歌を歌うと、三塁側スタンドから全校応援の生徒約200人、OBや関係者が一緒に歌う声も聞こえてきた。38年ぶりの重みある勝利を実感し、うれしくなった。

 111球を投げ終えた松井は「皆で一緒に楽しくやろうと思い切り投げ、理想のピッチングができました」と言葉を弾ませた。さらに「相手打者のバランスを崩す投球を心がけました」と続けた。この日、左腕から130キロ直球とスライダー、スクリューボールを多めに使い打者のタイミングを狂わせた。2回先頭打者にカーブをいい当たりにされると、すぐに伊藤捕手を呼んで言葉を交わした。相手の弱みを冷静に見極め、修正した。7回まで散発の3安打無失点、8回に1点は失ったものの、堂々の投球で勝利に貢献した。

 昨春、渡会丈人監督(26)が就任、田所亮部長(27)とヤングコンビで指導するようになりチームが変わった。方針は簡単だった。「大きな舞台でも、大きな声を出し、意思を確認できるようにしよう」。普段の練習から大声を出すことで自主性が生まれ始め、チームに浸透。この日のバッテリーの会話も自然な行動だった。

 部員の意見でユニホームをこの春に一新した。帽子にあったイニシャルを胸に採用し、「takikawa」の文字が赤く躍る。34年ぶりとなる北大会の大舞台。前日13日の公式練習に備えて自校グラウンドで「公式練習の練習」をやり、帯広の森に乗り込んだ。「できる準備はやっていたほうがいいでしょう」と渡会監督。この日、好投した松井をはじめ、選手たちを伸び伸びと生かしてOBらが待ち望んだ勝利を挙げた。明日16日の準々決勝は富良野が相手。松井は「次も思い切ってどんどん打たせて取りたい」と胸を張った。【中尾猛】