<高校野球熊本大会:済々黌7-3必由館>◇25日◇決勝◇藤崎台県営

 創立130周年のメモリアル甲子園だ。熊本は伝統校の済々黌が18年ぶりの甲子園出場を決めた。準決勝で強打の九州学院を完封した2年生エースの大竹耕太郎が、2回までに3失点。しかし、2回裏に一挙4点を奪って逆転し、8回は9番の安藤太一一塁手(2年)の満塁走者一掃の二塁打で突き放した。同じ託麻中で全国大会を経験した2年生コンビが、古豪復活の投打の両輪となった。

 「18年ぶり」は3球三振で決めた。9回2死走者なし。大竹は132キロストレートを投げ込み、相手のバットは動かない。瞬間、黄色に染まった一塁スタンドは、はじけた大騒ぎ。創立130周年の記念イヤーに決めた甲子園。県の高野連会長も務める中西真也校長(58)は「校長として感無量。うれしい限りです。130周年に大きな花を添えてもらった」と中立の立場を離れて喜びにひたった。

 「18年ぶり」の幕開けは波乱だった。前日の準決勝で九州学院の強打線を完封した大竹がつかまる。初回に1点を先制され、2回も4安打を集中されて2点を失った。バットを短く持ち、逆方向を狙う必由館の策にはまった。西口貴大捕手(3年)も「あせりました」と冷や汗を流した。

 「18年ぶり」への執念だった。2回裏、西口の左前打から反攻は始まった。相手失策も重なり、一挙4得点で逆転。これで大竹の心中も切り替わった。「大きかった。リードされていると、しているでは違う」。

 九州学院を全身全霊で封じ込んだ反動は大きかった。「一晩寝て脇腹が…」。最速138キロの直球は、130キロ台前半しか出ない。そこを立ち上がりは狙われたが、逆転してから緩い球を使った。「ここまで打つかと思いました」と苦笑いの11安打されても3失点。我慢の投球に応え、8回に託麻中からの同僚安藤が、満塁走者を一掃する二塁打で追加点をプレゼントした。「1点差で9回はきつい。大竹のために点を取りたかった」と言った安藤は4打点。ともに中学時代、全国大会を経験した2年生が「18年ぶり」の扉を開いた。

 「18年かかりましたね」と選手で甲子園を経験した池田満頼監督(39)は感慨深そうにつぶやく。明治から続く歴史の1ページ。それだけに深い。甲子園。「小さいころからのあこがれでした」。18年前はまだ生まれていない大竹は、無邪気に笑った。【実藤健一】

 ◆済々黌

 熊本県最古の高校。1879年(明12)に前身の同心学舎が設立され、1882年(明15)に済々黌として創立。生徒数は1238人(うち女子631人)。野球部は1900年(明33)創部。現在の部員数は56人。甲子園は春3回で58年に優勝。夏は94年以来7度目。主なOBは元広島の監督で、現東京国際大監督の古葉竹識氏、お笑いコンビくりぃむしちゅーら。熊本市中央区黒髪2の22の1。中西真也校長。◆Vへの足跡◆2回戦9-0菊池農3回戦9-2松橋4回戦3-0熊本国府準々決勝9-3有明準決勝1-0九州学院決勝7-3必由館