<高校野球春季宮城大会:仙台三4-0仙台商>◇28日◇3位決定戦◇Kスタ宮城

 宮城の3位決定戦で仙台三が仙台商を下し、28年ぶり2度目の東北大会出場を決めた。背番号11の右腕中村希生(きお)が3安打完封。中川伝市郎捕手との2年生バッテリーの呼吸も抜群だった。東北大会は6月6日から山形県野球場などで行われる。

 仙台三が誇る「中中バッテリー」が、「なかなかやる…」どころか、最高の結果を出した。中村は中川のサイン通りに投げ、スコアボードに黙々とゼロを並べていった。一番自信のあるスライダーにカーブ、シンカーを織り交ぜ、8回以外は三塁を踏ませなかった。3安打8三振で完封。今大会3試合目の登板だったが「一番調子が良かった。ここを目指してやってきた」と114球を投げ抜いた。

 絶対安心の女房役がいるからこそ、気持ち良く腕を振れる。捕手の中川とは、仙台市立富沢中1年の秋からバッテリーを組んできた。「気を使わなくていいし、やりやすい」。中村に誘われて仙台三に進んだ中川は「コーナーに力のあるボールがきていたし大丈夫」と、巧みなリードで仙台商打線に的を絞らせなかった。

 3月まで泉松陵を指揮していた佐々木久善監督(47)は、昨秋の中部地区大会で、このバッテリーに完封負けを喫していた。その分、2人の良さは嫌というほど?

 分かる。大事な1戦を託し「重圧のかかる試合でここまでできるのは素晴らしい」と、能力の高さにあらためて感服した。

 負けられない相手だった。仙台三OBの佐々木監督は高2の時、夏の宮城大会決勝で仙台商に0-7で敗れていた。しかも、9回2死までノーヒットという屈辱…。前日27日の準決勝後には、当時のことを選手に話しており「4月2日の(赴任して)最初のミーティングでもその話をした。先輩の鬱憤(うっぷん)を晴らしてくれ、と」。中川は「モチベーションは上がった」と先輩の無念を知って心を熱くした。一丸となって借りを返した。

 準々決勝の東北戦では、2死三塁からセーフティースクイズで得点。失敗を恐れない積極的な姿勢で、28年ぶりの東北大会に臨む。中村は「しっかりと夏につなげたい」とさらなるレベルアップを期した。【今井恵太】