<全国高校野球選手権:済美9-7三重>◇14日◇2回戦

 初戦から甲子園最速だ!

 済美(愛媛)のエース安楽智大(2年)が、甲子園最速の155キロを記録。07年夏に仙台育英(宮城)の佐藤由規(ヤクルト)が出した甲子園最速に並んだ。だが体調不良もあり、立ち上がり2失点、9回にも5失点と打ち込まれる苦しい展開。11安打7失点(自責点6)と苦しみながら初戦を突破した。

 157キロ右腕安楽は苦しみながらも初戦を突破した。7点リードの9回に5失点。猛反撃に何とか耐えた2年生エースは「申し訳ないです。今日は10点くらい」と反省しきりだった。

 “魔の9回”だった。昨秋の四国大会準決勝、鳴門戦では9回に4-1をひっくり返されサヨナラ負け。選抜大会の2回戦、広陵戦では3-0で迎えた9回に追いつかれ延長戦にもつれ込んだ。勝ちはしたが、9回に苦手意識を持っている。三重の追い上げに「一瞬、よぎった」と最悪の展開も考えた。11安打7失点(自責点6)と苦しい展開だったが、何とか逃げ切った。

 それでも1回に5番島田への4球目、二ゴロに打ち取った速球は、甲子園最速の155キロ。スピードガンが普及した80年以降、07年夏に仙台育英(宮城)の佐藤由規(ヤクルト)が出した記録に並んだ。初回から150キロ台を連発し、満員の甲子園をどよめかせた。

 愛媛大会決勝後、「肩甲骨の炎症」と診断された。センバツから球数を減少させたとはいえ、506球を投げ抜いた安楽の体は悲鳴を上げていた。肩、肘、腰、足と全身に張りが出ていた。上甲正典監督(66)は「太ももの外側が鉄板が入ったような硬さ」と話し、ノースロー調整を続けた。9日に本格的なピッチングを開始。前日13日のブルペンで40球を投げたが、首をかしげ、納得していない表情も見せた。何度も肩甲骨のストレッチを繰り返していた。

 不調はそれだけではなかった。6日に発熱と下痢で体調を崩した。1日休養を取り、次の日には復帰。同監督は「熱は出てなくても1日休ませようと考えてはいた」と話すが、体調面でも万全の状態ではなかった。

 苦しむエースを助けたのは、女房役の金子だ。相手打線には、安楽の最速157キロ直球の他に、金子の配球も研究されていた。だが、三重の3番長野は「打たれた球種を次の打席では使わない。それが分かっていても打てない組み立てだった」と証言した。「調子が悪かった」(安楽)とスライダーが使えず、直球頼みになったが、金子の好リードにも助けられ、何とか逃げ切った。

 「9回に追いつかれなかったのが成長」と最後まで笑顔はなかった。「もっと3年生と野球がしたい。次はしっかり投げたい」と改善を誓った。【宮崎えり子】