今秋ドラフトの目玉で、昨夏の甲子園で1試合22奪三振の新記録を樹立した桐光学園(神奈川)松井裕樹投手(3年)が今月末にプロ入りを表明することが14日、分かった。この日神奈川・平塚市で行われた秋季神奈川県大会で、同校の塩脇政治部長(45)が23日以降にも会見を行うと明言。松井自らの口でプロ入り宣言をすることが確実となった。これまで進路に関する明言を避けてきたが、8日まで行われていた18Uワールドカップ(台湾)を終え、決断したとみられる。来月24日に開かれるドラフト会議へ、怪物争奪戦が本格的に幕を開ける。

 松井が進路について、ついに口を開く。前期の学業評定が決まる23日以降に自らの口で国内プロ野球挑戦を明言する。この日の神奈川県大会後に桐光学園・塩脇部長が「試験が終了して、成績が確定する再来週以降に方向性をつけて発表します。10月1日の授業開始までに決着がつくと思います」と話した。

 月末に行われる会見でプロ入りを表明するのは決定的だ。社会人や進学の可能性もあったが、有力視されていた東京6大学はセレクションが終了。受験しておらず、進学の可能性はほぼない。大リーグ挑戦は考えておらず、進路は国内プロに絞られた。野呂雅之監督(52)は「全選手の進路など、来年度以降の準備をさせてもらってます。キチッと成績が決まってから松井と話し合いを持ちます」と話した。17日からの試験が終了する今週末にも最終的な意思確認を行うことになるが、プロ志望届を提出することは間違いない。

 これまで松井は進路について口を閉ざしてきた。7月25日に夏の神奈川大会で敗退。最後の甲子園出場がなくなり、引退となったが「監督とゆっくり話をして決めたい」と話すにとどめていた。進路を明言しなかった理由は、日本代表として18Uワールドカップへの選出が内定していたからだ。「世界一を目指している。進路はまだ考えていません」と年始に立てた『世界一の左腕になる』という目標だけを見つめていた。

 日本のエースとして臨んだ初の国際大会では3戦を投げ、2勝を挙げた。“伝家の宝刀”スライダーを武器に韓国や米国といった強豪国から27奪三振。惜しくも決勝で敗れ、準優勝となったが「スライダーは振ってきていた。これからの野球人生でも生きる」と自信を深めていた。世界一という目標は達成できなかった。それでも高校最後の試合を終え、試合後には「上のレベルで野球を続けていきたい。また日本代表のユニホームを着たい」と晴れやかな表情で将来について語った。

 台湾で行われたワールドカップには巨人、阪神、DeNA、ソフトバンク、日本ハム、西武が視察に訪れ、熱い視線を注いだ。プロ入りを表明することで国内球団の争奪戦は必至。怪物左腕の表明を受けて、秋のドラフト戦線が動きだす。【島根純】

 ◆松井裕樹(まつい・ゆうき)1995年(平7)10月30日、横浜市生まれ。小学2年で野球を始め、3年生から投手。6年時に横浜ベイスターズジュニアチームで12球団ジュニアトーナメント出場。昨夏甲子園で10連続を含む1試合22奪三振。今夏は神奈川大会の準々決勝で横浜に敗れた。目標の投手は巨人杉内。好きな歌手は西野カナ。家族は両親と弟。174センチ、75キロ。左投げ左打ち。

 ◆台湾から帰国後の松井

 現在も千葉の自宅には帰らず、桐光学園の寮で生活をしている。9日に帰国してから2日間はオフで休養。台湾遠征のため17日から振り替えで行われる期末試験に備えた。現在は勉強を行いつつ、練習は体を軽く動かす程度。それでも秋季大会中の後輩のため「打撃投手をやりましょうか?」と野呂監督に話すなど、ほぼ無休で練習に取り組んでいる。