<高校野球沖縄大会:沖縄水産2-1八重山>◇21日◇1回戦

 沖縄水産が古豪復活へ「改心」の夏1勝を飾った。第96回全国高校野球選手権(8月9日開幕・甲子園)沖縄県大会が開幕。オープニングゲームで沖縄水産が八重山に逆転勝ちした。昨年8月から新垣隆夫監督(44)が就任。野球への取り組みなど生活態度から改善させ、16年も甲子園から遠ざかる古豪をゼロから作り直した。

 初戦を何とか1点差で逃げ切った。夏連続準V当時と変わらない「沖水」のユニホームだが、県内で圧倒する力は今はない。1点リードされた5回2死まで無安打に抑えられていた。四球とチーム初安打で一、三塁。1番上間義士左翼手(3年)の左越え二塁打で奪った2点を守りきった。

 新垣監督は「この試合だけは絶対に勝たしてやりたいと思った。うれしい1勝です」と心の底から喜んだ。昨年8月に新監督に就任した。「引き継いだ時点では本当にすさんだチームだった」。今年4月に明るみに出たが、前監督は領収書を偽造し保護者会から支給される補助費約40万円を横領したとし、日本学生野球協会から2年間の謹慎処分を受けた。

 生活指導を担当する新垣監督に小禄健夫校長から「野球部を立て直してほしい」と再建を託された。まず監督室を廃止。部室などから山のように瓶やゴミが出てきた。新チームになり、半分以上の最上級生が眉をそってきたが、厳しく禁止した。新垣監督は「それまでの野球部は治外法権だった。とにかく心の部分の改革をしてきました。3年生がよく変えてくれた」と感謝する。3年生も自ら洗濯や練習の準備を行うようになった。この日1失点完投勝利のエース城間喬汰投手(3年)は「そういうことはなしにしていこうと決めました」と下級生への過剰な指導もなくした。

 甲子園には98年から16年も遠ざかる。新垣監督は「1度看板は下ろしました。生徒には伝統の重圧は持つなと言っています」と、新しい沖縄水産を選手たちとつくり出していく。

 2回戦では優勝候補の沖縄尚学と対戦する。今はまだすぐ甲子園とは言えない。だが、この1勝は沖縄水産にとって新たな伝統への1ページになった。【石橋隆雄】

 ◆沖縄水産メモ

 甲子園には春3回、夏9回出場。80年から故・栽弘義氏(享年65)が監督に就任し、84年から5年連続で甲子園に出場。90、91年夏は2年連続で準優勝を果たした。91年夏は、後に巨人やソフトバンクで外野手として活躍した大野倫氏がエースとしてチームをけん引。右肘を痛めたまま大会を迎えたが、決勝まで4連投を含む6試合、773球を1人で投げ抜いた。大会中に剥離骨折し、大阪桐蔭との決勝戦は13失点を喫したが、ビー玉程度の骨の破片が浮いたまま投球を続け、最後までマウンドを守った。