<高校野球南北海道大会:札幌北陵6-5札幌新川>◇5日◇札幌地区Aブロック代表決定戦◇札幌円山

 “陰の4番”の一撃が、甲子園への道をこじ開けた。札幌地区で代表決定戦2試合が行われ、札幌北陵が延長戦の末、札幌新川を6-5で下し、創部42年目で3季通じて初の道大会出場を決めた。11回2死満塁から、今春まで4番を打っていた7番猪野毛(いのけ)雅人一塁手(3年)が、4安打目となる勝ち越し適時打を左前へ放った。

 看板打線には、2人の“4番”がいる。正真正銘の4番阿部聖也捕手(3年)と、滝田真之監督(39)が「彼以上の打者はいない」と信頼を寄せる7番猪野毛だ。そんな、もう1人の強打者が、延長11回に及んだ乱打戦に終止符を打った。

 「もう、決めてこい」とベンチから送り出された猪野毛の最後の打席は、2死満塁。真ん中内寄りの直球を力いっぱい、たたいた。4安打3打点と大暴れしたヒーローは「7番は“第2の4番”だと思っている。役割を果たせてホッとしたのと、やったぞという気持ちでいっぱい」と、胸を張った。

 4番を任されていたこともあったが、好機に弱く、7番に。もともと、あがり性で「人前でしゃべったりするのも苦手」。下位打線を打つことでプレッシャーから解放され、持ち前の打撃力をいかんなく発揮している。「雅人が7番にいると、下位打線でもつながるという安心感がある。ヒットを打つうまさは、あいつにはかなわない」と阿部が認めるバットコントロールで、チームを3季通じて初の道大会出場へ導いた。

 札幌市北区に位置する、ごく普通の公立校だ。今年、大量24人の1年生が入部し、一気に部員54人の大所帯になった。滝田監督は「立場が人を変えると言うけど、3年生がしっかりしてきた」と目を細める。

 4月には北海や東海大四といった札幌市内の私立強豪と練習試合を行ったが、相手は主力ではないBチームだった。初めての南北海道大会。「出るからには、勝ちます。下克上といった感じで、私学に打ち勝って見返したいですね」(猪野毛)。自慢の打線で、初舞台に挑む。【中島宙恵】