<高校野球山形大会:谷地9-4庄総・加茂>◇11日◇1回戦◇荘銀・日新スタジアム

 開幕試合で、庄内総合8人と加茂水産1人の連合チーム、庄総・加茂の田中宏樹内野手(加茂水産3年)が7回、大会1号2ランを放った。初回には大会初安打初得点も記録するなど活躍。谷地に逆転負けし、連合チームとして県初の夏1勝は逃したが、大会の歴史に確かな1ページを加えた。

 加茂水産ただ1人の野球部員、田中が開幕試合で快音を響かせた。7点差でコールド負け目前の7回表。1死二塁から左翼ポール直撃の大会1号本塁打を放った。練習試合を含め、野球人生初アーチだ。9回表2死の場面では三ゴロに倒れ、最後の打者となったが「悔いの残らないようにやり切りました。みんなで1つになれた」。敗戦にも涙はみせず、充実感をみなぎらせた。

 連合チームとして9人で臨んだ夏。白基調の庄内総合の8人とともに、1人だけ胸に「Suisan」と入った青いユニホームで戦った。初回先頭でいきなり右中間三塁打を放ち、3番斎藤翼(2年)の三塁打で大会初得点のホームも踏んだ。生還後は一塁や三塁コーチも務めた。遊撃守備でも内外野に声をかけ続け、逆転された後もマウンド上の1年生エース茂木玲を励ました。

 加茂水産は昨夏の大会後、3年生が抜けると部員は2人になった。秋から庄内総合と連合チームを組んだが、大会後に1人が退部。それでも「野球をやめるつもりはなかった」。創部64年の野球部の伝統を1人で背負い、庄内総合の仲間と練習を重ねてきた。この日スタンドでは父正幸さん、母恵美さん(ともに49)、姉早紀さん(21)も観戦。正幸さんは息子の活躍に「私の方が興奮した。連合チームに入れてもらえたおかげです」と感謝した。

 田中がユニホームを脱げば、加茂水産の部員はゼロになる。「体を動かすためにも(部員として)練習は続けたい。今日の試合を見た中学生が入って来てくれればうれしい」。来春、自らが守り続けた野球部に新1年生が入ってくることを願いつつ、田中は最後の夏を終えた。【佐々木雄高】

 ◆田中宏樹(たなか・ひろき)1996年(平8)11月13日、山形県鶴岡市出身。大山小3年から大山スポーツ少年団で野球を始める。鶴岡五中では軟式野球部に所属。加茂水産では三塁手で1年夏からベンチ入りし、レギュラー。昨秋の連合チーム庄総・加茂では遊撃手。家族は祖父母、両親、姉、妹。右投げ右打ち。168センチ、69キロ。血液型O。