<高校野球福島大会:若松商10-0相双福島>◇12日◇1回戦◇あいづ球場

 双葉と相馬農の連合チーム相双福島が、若松商に6回コールドで敗れた。

 数々の苦労を経験した大友大輝(3年)の最後の夏は、1時間20分で終わった。チームの安打は1本。2投手の継投による完全試合を免れるのがやっとだった。「相馬農と少しでも長い夏にしたかった」と、連合チームらしく仲間を思いやった。

 たった3人しかいない双葉の1人。同学年の大関勇斗が入部していない2年前の夏、たった1人で練習した日もあった。2年生になって、相馬農との合同練習は週末だけ。両校の間には福島第1原発があり通行できないため、双葉の選手が遠回りして、約130キロの距離を車で約2時間半かけて相馬農まで行く。「移動が多くて苦痛だった」。それでも前を向いた。好きな野球はやめられなかった。

 主将の遠藤広大(3年=相馬農)とチームを良くするため、何度も意見がぶつかった。大会直前に1年生が1人抜けて部員13人。3年生8人が引退すると1年生5人。この秋以降は「相双福島」の名前が残るかどうかも分からない。大友は昨夏、初めて夏1勝を経験した。部員不足で先の見えない後輩たちのためにも、勝利だけは贈りたかった。

 2打数無安打に終わったが、背番号5をつけて守った左翼では、9度の守備機会を失策なし。「打てなかったのは残念だけど、守備はミスがなかった。自分のベストは尽くせた」。トレードマークの眼鏡を外し、大友は胸を張った。【久野朗】