<高校野球和歌山大会:箕島8-6和歌山東>◇20日◇3回戦◇紀三井寺

 和歌山大会では箕島が2度の劣勢をはね返して伝統の粘りを発揮した。代打で出場した「秘密兵器」こと、伊政俊輔内野手(3年)が2度の同点劇を演出。2点差の6回に同点のきっかけとなる適時打、再び突き放された7回にも右前に同点適時打を放ち、チームを救った。初戦に続く逆転勝ちで、ベスト8進出を決めた。

 代打の切り札が2度の窮地を救った。尾藤強監督(44)が「どこかで使いたいと思っていた」と温めていた左打者・伊政が2度の同点劇を演出した。

 1点を追う7回2死一、三塁。「さっき行けたから次も行ける」と同点に追いつく右前適時打。2点差だった6回にも左中間への適時三塁打を放ち、敵失の間に、自ら同点のベースを踏んでいた。

 日ごろの地道な努力がチームを救った。尾藤監督が伊政のために「何かのヒントになれば」と考えたのは、ティー打撃のように、ピンポン球を投げてもらい、左手だけでカラーバットで打つ練習だった。伊政はそれをコツコツ続けてきた。守備では「チームで一番下手だ」と言われるほどだが、尾藤監督からは「自分のバッティングを信じろ」と言われ、長所を伸ばし続けた。「ためて逆方向に打てた。『ピン球効果』が出た」とここ一番でその成果を発揮。尾藤監督も「当たり前ですが、報われない努力はない」とたたえた。

 5回までリードされ「正直あせりはあった」と伊政は振り返る。しかし5回裏終了後、尾藤監督は円陣で選手に語りかけた。「この間は一気に3点も取られた。今日なんて1点ずつしか取られてない。あせるな、後半勝負やで」。初戦・海南戦で逆転は経験済みだった。その言葉に安心し「出たからには思いっきり振ろう」と伊政は初の同点適時打につなげた。

 「チームのみんなで勝ててほんまによかった」。2度の激戦を勝ち抜いた伝統の力で、大会2連覇へ真っすぐに突き進む。【磯綾乃】