<高校野球東兵庫大会:報徳学園2-1神戸弘陵>◇25日◇決勝

 リベンジの夏だ!

 報徳学園が延長12回の激闘を制して2年連続の出場を決めた。エース近田怜王(れお=3年)が完投。最後は女房役の糸井慎太朗主将(3年=捕手)がサヨナラ打で決めた。

 近田は信じていた。延長12回2死三塁で打席に立ったのは、女房役の糸井だ。「糸井が打ってくれると信じていた。だから(前に乗り出すこともなく)後方ベンチに座って、見ていたんです」。糸井の打球は三遊間へ飛んだ。相手遊撃手が止めるが、投げられない。三塁走者がサヨナラのホームを駆け抜けた。

 ホームベース付近に歓喜の輪ができた。近田は最後にベンチを出ると、ゆっくり一塁ベースに歩いた。そして糸井を抱きしめた。「最高やで、お前…」。20日の準々決勝で熱中症にかかりながら、この日12回182球の熱投を支えてくれた感謝を込めた。糸井は「お前にほめられたことってあったかな」と、泣き笑いで返した。

 激闘だった。5回、2失策から神戸弘陵に1点を先制された。6回、近田が自身のバットで同点に追いついた。その後は報徳学園が押した。しかしチャンスを作りながら「あと1点」が奪えない。その状況で太い絆を持つバッテリーは、耐え続けた。

 昨夏の甲子園大会初戦。近田は熱中症が原因とみられる両足けいれんで倒れた。そのときも看病した加藤雄三部長(60)は「大丈夫か?」と声をかけようとした。だが近田は自分で動いていた。塩をなめ、氷で首筋を冷やした。何回まで続こうと、投げ抜く覚悟だった。

 暑くなるたび、苦しくなるたび、近田は糸井の言葉を思い出した。熱中症の後遺症で投げられなくなった昨秋。「近畿大会はチカちゃんは、バッティングで頑張ってくれたらいい。でも来年の夏は、チカちゃんがエースやで」。上手からの一塁送球すら出来ない自分を信じてくれた。何度も何度も、糸井の言葉を思い出した。グラブに縫い込んだ闘争心の替え字「投想神(とうそうしん)」を見て、胸の中で「想はみんなの想い、そして頑張れば神さまが見ていてくれる」とつぶやいて最後まで投げた。

 永田裕治監督(45)も涙が止まらなかった。「もうあかんのやないかなと思ったこともあったんです。よく成長してくれました」。男泣きする視線の先に、バッテリーがいた。点滴を打ちながら今大会の全球を受けてくれた糸井を、試合後は近田がしっかり支えていた。【堀まどか】