全国高校野球選手権(甲子園)で常葉学園菊川の準々決勝(16日、第1試合=午前11時)の相手が、智弁和歌山(和歌山)に決まった。抽選が行われた14日は、伊丹市の伊丹スポーツセンターで約3時間の練習を行った。左ひじ痛のエース戸狩聡希(3年)は、登板のめどがつかない状態。4番中川雅也右翼手(3年)に投球練習させ、投手としての起用を準備した。スクランブル態勢で2年連続の4強入り、県勢の春夏通算甲子園130勝を狙う。

 投手総動員で、強打の智弁和歌山を封じる。佐野心監督(41)は「一回り抑えてもらうケースが出てくるかも」と、1年前まで投手兼任だった中川をブルペン入りさせた。中川はスライダー、フォークなど変化球を交え、スリークオーター気味のフォームから31球を投げた。「僕が投げて勝てるのならそれでいい」。投手兼任時代は、野手よりも数倍多いランニングメニューが嫌いだった。4番右翼手という状況では走り込みもなく「楽しいな、ピッチャー」と叫び、喜々として球を投げ込んだ。

 中学時代はエースで、昨春の県大会初戦(対富士宮西)では先発した実績がある。3回戦で先発し、3回途中で降板した萩原大起投手(2年)が横を通りがかると「びびるな。オレ、絶対坂口を抑えるよ」と宣言。3回戦(対駒大岩見沢)で史上初の1イニング2発を放った強打者・坂口真規内野手(3年)にも、強気で向かう。

 練習中、全選手が外野に集まり、青空ミーティングが行われた。佐野監督は「戸狩は投げたくても投げられない。自分たちがグラウンドに立てる喜びをかみしめてやってほしい」と、選手に呼び掛けた。戸狩はしばらく涙を流しながら、ベンチで他の選手が練習する姿を見つめていた。中川は「決勝までいけば戸狩が投げられる。それまで勝つ。一番つらいのはあいつだし、僕もそう思う」。3回戦で昨年から夏6試合目、20打席目で初安打を放って勢いに乗る主砲。野島大介(3年)ら投手陣を、打者としても投手として救う。【斎藤直樹】