夢を後輩に託す。全国高校野球選手権(甲子園)で東北勢初の春夏連続4強入りを果たした、花巻東(岩手)のエース菊池雄星(3年)が、準決勝(中京大中京戦)から一夜明けた24日、充実した表情で新たな目標を掲げた。プロの世界への準備を進めるとともに、新チームを全力でサポートすることを誓った。地元の思いを背負って戦った誇りを胸に、チームは25日、岩手に戻る。

 聖地で流した涙はない。激闘から一夜明け、菊池の表情は晴れやかだった。

 菊池

 今朝は2年半ぶりに、野球のことを考えずに起きられました。でも同時に「これからどうしよう」という気持ちになって(笑い)。とにかく、普通の高校生に戻りたいですね。

 前夜は仲間と記念撮影しながら、思い出話で盛り上がった。重圧から解き放たれた菊池は、18歳の少年に戻っていた。

 それでも、目標の日本一を果たせなかった悔しさは残る。この日も「ほかのチームが優勝するのは見たくない」と、決勝が行われた甲子園には行かずチームメートと買い物を楽しんだ。

 その悔しさ、果たせなかった夢は後輩に託す。新チームの公式戦初戦は、9月6日の秋季岩手県大会地区予選。背筋痛を抱える菊池は岩手に戻り、すぐに病院で治療を受ける予定。「早く治して、打撃投手をやりたい。地元に応援されるチームになってほしい」と後輩に力を貸すつもりだ。

 また菊池自身にも、実戦の舞台が残されている。チームは9月27日からの新潟国体に出場する。「幸い国体があるので、みんなともう少し野球ができる。今までは勝たなきゃいけないガチガチの中でやってきたので、国体では楽しんで投げたい」。最後の舞台は笑顔で臨むつもりだ。

 チームは25日、帰郷し、学校近くの花巻市総合体育館で報告会を行う。岩手、そして東北に感動と勇気を与えた菊池。「花巻東野球部員」としていられる残りの日々は、後輩のために全力を尽くす。【由本裕貴】