<高校野球広島大会>◇24日◇4回戦

 広陵の「金本2世」がお目覚めだ。4番・丸子達也内野手(2年)が今大会初安打を放った。盈進戦6回の第4打席でダメ押しの右前タイムリー。チームを8-0の7回コールド勝ちに導いた。今大会はこの日の第3打席まで11打席で6四死球と勝負を避けられ、リズムに乗れずにいた。8強が出そろい、25日から準々決勝が行われる。

 広陵丸子は、迷いなくバットを振り抜いた。6点リードの6回1死一、二塁だ。マウンド上は盈進の3番手・渡辺祥太(3年)。カウント2-3。外角ストレートを芯でとらえると、打球は猛烈な勢いで右前を襲った。会心の適時打。背番号3は一塁上で安堵(あんど)の表情を浮かべた。「打球があまりに速くて(2人)生還できなかったでしょ」と、中井哲之監督(48)もあきれ顔で喜んだ。

 徹底マークを丸子が振り払った。今春センバツで17打数7安打4打点と大暴れした。その結果、今大会は厳しいコースを突かれるケースが多い。四死球は既に6。真っ向勝負が少ない中で、12打席目にして結果を出した主砲は「ようやく1本出たんで。これからです」と巻き返しを誓った。

 復活を告げる一打は、忘れられない一打となった。広陵にとって、旧広島市民球場での試合はこの日が最後。丸子がチーム最後の「H」ランプをともした。初めて同球場を訪れたのは小6の時。所属していた呉市のソフトボールチーム「仁方B」のメンバーとともに、カープの試合を観戦した。お目当ては「仁方B」のOBで、当時広島内野手だった松本奉文氏(現広島スカウト)。すでに晩年で出番は少なかったが、その日は出場した。地元のヒーローを見られてうれしかった。そんな球場への、惜別の一打でもあった。

 待望の安打が出て、1発への期待も高まる。センバツ準決勝・日大三戦では、弾丸ライナーで右翼席に放り込んだ。「狙わないようにしていますよ」と苦笑いするが、25日の準々決勝・崇徳戦の会場は、昨年の準々決勝・呉港戦で本塁打を放った「しまなみ」。悪い印象があるはずがない。4強入りに向け、トンネルを抜けた丸子がチームをけん引する。【佐藤貴洋】