<高校野球神奈川大会>◇25日◇準々決勝

 激戦区神奈川の注目対決は、横浜が桐蔭学園を6-2で破り4強に進出した。米国人を父に持つ乙坂智外野手(2年)が4安打5打点して逆転勝利を導いた。

 7番打者・乙坂のバットが、横浜を4強に押し上げた。3-2の1点差で迎えた9回2死満塁だった。桐蔭学園・藤岡が投じた2球目、内角直球をとらえた打球は、中堅手の頭上を越えた。走者一掃3点三塁打となり、勝負を決めた。乙坂は「狙っていました。初球が内角ストレートで、相手バッテリーの『内角は打てないだろう』って思惑が見えたんで」。米国人の父譲りの端正な顔が、ニヤリと笑った。

 2点を追う6回には、左中間へ同点の2点適時二塁打も放った。逆方向を徹底した5打数4安打で、チームの6得点中5点までをたたき出した。24日の5回戦と合わせると、10打数8安打7打点の大暴れだ。「自分は脇役。チームが勝てば自分の結果は二の次、三の次、四の次でいい。単打だってカッコイイ」と胸を張る。1番を任された昨年は長打を狙い、結果を出せなかった。「自分が主役」の意識が顔を出した。今春、慶応戦に敗れたあと、その考え方を改めたという。

 大リーグ志向だ。打撃の手本はレッドソックス・ペドロイア内野手。アイスホッケーの選手だった父譲りの運動能力で、50メートルを5秒9で駆け抜ける。幼少時を米カンザスシティーで過ごした経験があり「将来はメジャーでもやりたい。日本と米国の野球を交ぜ、イチロー選手みたいにスピードを生かしたい」と目を輝かせる。雰囲気がイチロー似と言われると「よく言われます」とはにかんだ。

 準決勝は昨夏の準々決勝でサヨナラ負けした横浜隼人が相手になる。乙坂がここでも脇役に徹する意識でプレーすれば、チームも昨年とは違う結果を出すはずだ。【鎌田良美】