<高校野球宮城大会>◇25日◇準決勝

 気仙沼向洋が歴史的勝利を挙げた。昨夏王者の東北に6-5で逆転勝ちし、1923年の創部以来、初の決勝進出。6番小山宜晃(のぶあき=3年)が8回に決勝2ランを放ち試合を決めた。

 狙い澄ました本塁打だった。4-4で迎えた8回2死一塁。読み切っていた初球だった。気仙沼向洋・小山宜が内角直球を振り抜くと「打った瞬間入ると思った」という打球は、甲子園の95メートルより広い101・5メートルの左翼ポール際に吸い込まれた。

 7回の前打席では変化球を右翼線にはじき返し、適時二塁打を放っていた。8回、バッターボックスに入り素振りをする際、右打者の小山宜は左足を右翼方向に踏み出し「変化球を待つ」そぶりをした。東北の左腕エース夏井康吉(2年)も変化球を嫌がり、直球を選ぶ。「本当は直球狙いでした」という小山宜が完ぺきに打ち返した。

 「左対策」は万全だった。1回戦の相手は昨秋県王者の古川学園。好投手の氏家優悟(3年)対策のため抽選会の日から、打撃マシンを左投手に見立て打ちまくった。成果が表れた。小山宜が氏家から決勝打を放ち1-0で勝利。2回戦以降も、その際に着ていたユニホームを着続けた。「全部で4着ほど持ってきてるけど、自分で洗濯して、明日もこれで行きます」。練習の成果と験担ぎが、初の決勝へ導いた。

 チームは3回戦以降は多賀城市に陣を取っているが、それまでは試合後、気仙沼市に帰っていた。企業のインターンシップに参加する部員や、検定試験を受ける部員のためでもあった。就職活動と並行して甲子園を目指す-。そんな苦労にも耐え、初の決勝進出をつかんだ。

 2年目の川村桂史監督(36)と東北の五十嵐征彦監督(34)は日体大の先輩後輩の間柄。「先輩を立ててくれたんでしょう」と川村監督は言った。初決勝の相手は昨夏準決勝で0-3で敗れた仙台育英。当時のベンチ入りメンバーが12人残っている。さあ、リベンジの決戦だ。【三須一紀】