<全国高校野球選手権:報徳学園3-2砺波工>◇10日◇1回戦

 報徳学園(兵庫)は、1年生・田村伊知郎投手が砺波工(富山)を5回2失点に抑え、初戦突破した。

 スーパー1年生・田村がベンチで声をからす。9回表2死満塁。エース大西一成(3年)はこん身の136キロ直球で、砺波工の4番上田を三振に切って取った。6回にマウンドを譲るとき「任せとけ」と言った先輩が勝利を締めくくり、笑顔でベンチを飛び出した。

 永田監督が春夏通算15度目、29試合目の甲子園で初めて先発を任せた1年生は、苦しんだ。初回、先頭打者への死球から1死二、三塁のピンチを招く。2回も2死三塁、4回はバックの失策も絡んで1死二、三塁…。永田監督には「これが甲子園だ」と言われた。それでも、5回を2失点でしのぐから、大物だ。

 15歳での甲子園デビューは必然だった。1年前、兵庫・山田中軟式野球部を引退後は早朝、放課後、帰宅後と合わせ、連日約15キロを走った。納豆が「最高の総合食」と聞くと、毎朝必ず食べる。「野球ノート」を作り、この8月の課題を「直球を磨くこと」に置く。予定通り、この日は自己最速140キロを出した。

 報徳学園に2年ぶりの夏の甲子園勝利をもたらした1年生を、永田監督は「今までで1番悪かった」と評した。期待が大きい分、採点も辛い。田村も「弱気になった部分もある。次はもっと腕を振って投げたい」と反省した。マスコミ向けの甲子園出場選手アンケートで「対戦したい相手」に「興南の島袋投手」と書いた。理由は「日本一のピッチャーと投げ合いたいから」-。底知れぬ野望と、可能性を秘めた少年の夏が始まった。【加藤裕一】