メジャーで乱闘は珍しくないが、日本の野球ファンには「なぜ報復するのか」と、疑問に思うことが多いのではないだろうか。これがまさに日米野球文化の大きな違いの1つであり、日本のファンが決して理解できない部分かもしれない。

 メジャーでは、報復をすることは必要なこと。仲間を守るためにはやらなければならない、と考えられている。乱闘に参加しなければならないし、チームメートが故意の死球を当てられたら、仕返しをしなければならない。「目には目を」だ。もしそれをやらなければ「ひどいヤツ」というレッテルを貼られることになる。

 8月24日のヤンキースとタイガースの試合で、ここ数年では最大規模というくらいの大乱闘が起こったが、そのときの空気も、まさにそうだった。

 乱闘中、タイガースのダグアウトで、ベテラン先発右腕ジャスティン・バーランダーと、打線の中軸の1人であるビクトル・マルティネスが、チームメート同士であるにもかかわらず言い争う場面があった。複数の地元メディアが伝えたところによると、その原因はマルティネスが乱闘の中心に割って入り、殴り合いを止めようとしたことだったという。やられたらやり返さなければならないのに、何で止めるんだと、マルティネスに激怒したのだという。

 乱闘があった試合後、会見に出てきたヤンキースのジョー・ジラルディ監督も、仲間を守るために闘った選手たちをサポートしていた。いわく「男子は男子の本能で動いた。自分たちが自分たちを守るためにやったんだ。本能からの行動なんだから、仕方がない」という。ヤンキースのクラブハウスでは、乱闘にからんだ選手が次々と大勢のメディアに囲まれ、騒然とした雰囲気だった。乱闘中にパンチを繰り出し4試合の出場停止処分を受けたゲーリー・サンチェス捕手も「チームメートを守るため、自然に手が出ただけ。チームメートは家族のようなものなんだ」と口をそろえていた。

 しかし、こうしたメジャーの乱闘の流儀にも、疑問を呈する米メディアが出ている。スポーツ・ライストレイテッド電子版は8月25日付の記事で「ヤンキースとタイガースの大乱闘は、メジャーに存在するビーンボール文化の限度を超えたのではないか。たぶんコミッショナーはガンジーの格言を読み返し『目には目をでは、世界が盲目になるだけだ』ということに気づくときだ」と提言している。メジャー全体の投手の平均球速が上がり剛速球を投げる投手が増えている昨今、球速158キロ以上のビーンボールは恐ろしい凶器となる。選手の安全を考え、古い野球文化を見直すべきときにきている、という声が上がっているのだ。