エンゼルス大谷翔平投手(27)が、後半戦の初登板でいきなり投手、打者、野手の3役でフル回転した。

19日(日本時間20日)、敵地でのアスレチックス戦に「2番投手」で出場。今季10度目のDH解除のリアル二刀流で臨んだマウンドで、6回を3安打無失点。直球は最速99・3マイル(約160キロ)をマークし、8奪三振の力投を見せた。7回からは右翼の守備に回り、打者では4打数1安打。チームは救援陣が踏ん張れず、2連敗を喫した。

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大谷にスイッチが入った。3回1死二、三塁。2番アンドルスを直球で押した。2球で追い込み、3球目はこの日最速99・3マイル(約160キロ)の外角直球でファウル。4球目も真っすぐで、最後は外角スライダーで空振り三振に切った。「ストライクの割合も悪くなかったですし、ランナーを置いてからの投球自体が良かったのかなと思います」。続くオルソンも直球で攻め二ゴロでピンチを脱すると、右拳を力強く握った。

点を与えない。今季、得点圏での被打率は1割9厘。走者なしではカットボールで打たせて取り、ピンチでは直球でグイグイ攻めた。「健康な状態でしっかりとマウンドに上がれていれば、そういう場面、(球速を)上げたいと思った時に必然的に上げられる」。この試合、最も遅い直球は90・7マイル(約146キロ)。最速と最大約14キロ差でメリハリをつけ、ア軍打者を翻弄(ほんろう)。体調面が安定している証拠だった。

前半戦は投打でフル稼働。1週間前にはホームランダービーに参加し、球宴には二刀流で出場した。「体の重さは特にはなかった。オールスターが終わって2日間休めましたし、たくさん寝て、スッキリして、後半戦に臨めている」と疲労も問題ない様子。打者では3回の第2打席で打球速度115・9マイル(186・5キロ)の強烈な中越え二塁打を放った。後半戦は打率2割3分5厘も「感覚的には紙一重。結果の割には、いいスイングができてる方かなとは思います」。結果以上に、好感触を得ている。

チームは敗れたが、6回96球で8奪三振の力投。ちょうど9年前の7月19日、花巻東3年だった大谷は、夏の岩手大会一関学院戦で初めて160キロをマークした。あの時のようにピンチでトップギアに上げ、ア軍打線を無失点に封じた。「一番(大事なこと)はいい状態でマウンドに上がること」。後半戦最初のリアル二刀流。盤石のスタートを切った。【斎藤庸裕】

▽マドン監督(大谷に)「球速も上がって、スライダー、カットボールも良かった。最終的にはスプリットも(感覚を)つかんだ。スペシャルなパフォーマンスだった」

◆大谷の160キロ記念日 大谷が初めて160キロを記録したのが、花巻東3年だった2012年(平24)7月19日の岩手大会準決勝・一関学院戦。岩手県営野球場の球場表示に大きなどよめきと拍手が起こった。6回2死二、三塁、フルカウントからの6球目。見逃し三振を奪った内角低めの1球だった。対戦した一関学院の5番鈴木匡は「地面につくぐらいの球でボールと思ったけど、浮き上がってきた」と証言した。